8つめ
彼女はずっと悩んでいた。もちろんそれは、あなたについてであり、彼やこれについてではない。
『今回の』あなたは、本当に自由奔放だった。もう、彼女が考えることが止まらないくらいに、自由だった。自由すぎて、自分のことしか考えていないくらだった。自分が多分一番可愛いのだろう。そう、彼女には見えてしまい、こうしてたくさんの時間をかけて悩んでしまっているのだ。
何をしても、何をやめても、拾っても、捨てても、悩みしか出てこなかった。彼女はそんな生活にやきもきしていた。本当なら、こんな気持ちは二度と感じないはずなのに、どうしてか、彼女はまたこれを感じて苦しんでいたのだ。多分、これも、そうなのだろう。
もう、本当に何も答えが出ないくらいには、悩んでおり、そんな彼女を眺める彼もまたやきもきしていた。
なぜ、あなたのことばかり考えて、彼女自身を追い詰めているのかと。彼は思うのだが、きっと彼女自身気づいていても尚、考えているのだろう。いや、気づいておらずそのまま考え続けている可能性もあるかもしれない。無意識に何かをしてしまうことは、特に不自然なことではないと思うが、彼らの間では、不自然にも感じる。
「他人について、二人で発表しようじゃないか」
彼がそっと声をかける。そんな言葉も聞こえていないように、彼女は悩み続けていたが、ふと常に見ている彼の目に曇りが見えて、慌てて、彼の言ったことを確認し直した。
他人について。本当にざっくりしている。他人の何について考えたらいいのか。性格なのか、見た目なのか、相性なのか、なんなのだろう。他人について考えたいことなんてたくさんあるではないか。それでも、他人について考えなくてはいけないのか。
今はあなたについて考えたい。
そう彼女は考えつくものの、考えれば、あなたも他人なのだと、そう気づいた。
たしかに、自分を起点とすると、誰も彼もが他人なのだが、大きく見れば、家族でないあなたは他人なのではないだろうか。他人とは知らない人という意味でなくてもいいのではないだろうか。括りで見なければ、誰もが他人で、括りで見れば誰もが他人ではなくなるのではないだろうか。ただ、あなたはそこに属さない。恋人……という括りなら入るのかもしれないが、今の状況だとどうだろう。それをこれは——彼女は、受け入れることができるのだろうか。
いや、難しいだろう。特に今は。
だが、他人ということに気がついてしまった彼女は考えることをやめられない。
どうしてあなたは無礼なのだろう。
どうしてあなたは不躾なのだろう。
どうしてあなたは放置するのだろう。
家族でもない、ただの他人なのに。
「わからない……」
ぽつりとつぶやいた。
彼は少し悲しくなった。
彼女はとても悲しくなった。
きっと、もうだめだろうと、何となく彼女は考えてしまうのだった。
8つめ、
燻る2人の恋 夜月心音 @Koharu99___
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