7つめ
彼女はまたもふくれっ面で、彼を見ていた。それはいつも通り沢山の問いかけをしてくる彼の質問を考えていることで、楽しく、わくわくしていたあの、あなたへの気持ちが薄れていっているような気がしたからだ。
だが、彼の方はそれでいいじゃないかと。それが彼らのやり方であり、存在意義ではないかと、思うのだが、口には出さない。
それは、きっと気づかれていることであるだろうし、きっと、無意味なことに違いないと思うからだ。
良い方に転ぶことはあるのかどうか。彼をを睨みつけてくる彼女は、彼の目の奥へとずっと睨みつけて離さなかった。
「怒りについて、発表しあおうじゃないか」
彼が口にした言葉で彼女は、よくわかってるじゃあないか。と、思った。そう、彼女は怒っていた。それは、彼についてでもこれについてでもなく、あなたについてであった。だが、きっとそれはあなたに対する、これの気持ちと一緒なのだろうとなんとなく彼女は感じていた。
それでも、怒りは止まるに止まらない。
彼に問いかけられた、怒りについて彼女は思考を働かせる。ただ、わかることは今彼女自身が怒っているということ。
なんで、あなたは気を遣ってくれないのか。
なんで、あなたは無神経なのか。
彼女ばかりが馬鹿ではないか。こんなにも気を遣って、一喜一憂して、舞い上がって、落とされて。
それでもあなたへの気持ちがなくなることはないのだけれど、彼女にはどうしてもわからなかった。
なぜ怒ってしまうのだろうか。
なぜこんなにもいっぱいに溢れてくるのか。
だって、こんな気持ちは無意味ではないか。
無意味すぎて訳がわからなくなるではないか。
でも、彼女自身にではなく、あなたに対して怒ってしまっている、彼女は無神経なのではないだろうか。だって、あなたははとても大切な人であり、だからこそ、これだけの揺らぎがあるのに、どうしてあなたはわかってくれないのだろう。
きっと、これもそれを思っているに違いない。
でも、怒りとはと言われてもやはり彼女には答えが出せなかった。
「わからない」
彼女はむすっと、答えた。どうして怒っているのかどうか、彼女には辿り着けなかった。
どうしてもたどりつけなかった。
少し悔しくありつつも、でも、そんなもんかなんて思い、彼女は彼をさらに睨みつけた。
彼女には睨まれて彼は少し居心地が悪くなりつつも、にこにこと笑ってみせた。
それは別に彼女に対して気を遣ったわけでも、空気を読んだわけでもない。
彼は気づいていた。
彼女はもうその答えをとっくに出していると言うことに……。
7つめ、
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