美味しい決戦!
三夏ふみ
苺のミルフィーユ
目の前に置かれた苺のミルフィーユが、こんなにも疎ましいと思ったのは初めてだ。
厳選された調度品が絵画の様に置かれる部屋で、微かに震える手が、整えられたアールグレーを口に運ぶ。
「明美さんがお好きだって聞いたから、今朝、買ってこさせましたのよ」
「まぁ、そうなんですか。有難う御座います、お義母様」
涼し気に紅茶を飲むその顔に、満面の笑みで返事をし、アールグレイをもう一口。お義母様の目の前に置かれた、頂きに粉雪が舞う和栗のモンブランと比べ、絶望的なオーラを放つ、今にも崩れ落ちそうな芳ばしい香り漂うパイ生地。
どうする。手土産の栗羊羹が出されないのは想定内としても、よりにもよって食べづらさSランクの、苺のミルフィーユが出てくるとは。
ああ、こんな所で出会わなければ、今すぐにでもこの手に包み、勢いのままに口いっぱいに頬張るのに。
「美味しいよ、これ」
のんきか!
色彩豊かな絨毯にパイ生地を舞わせ、美味しそうにケーキを頬張る直樹に心の中で突っ込みを入れる。
大事な一人息子が連れてきた、降って湧いた花嫁候補。些細な事だが試されるのは当然だ。
落ち着け私、大丈夫やれる。
こんな所で
いざ。尋常に勝負!
美味しい決戦! 三夏ふみ @BUNZI
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます