第43話 エンビVSアモン

「俺はお前に強くなってもらいたいんだよ。お前には素質があるからな」


 間合いをとったまま、エンビはアモンの様子を窺う。


「もうレベルも高くなってきて、ずっとその辺の雑魚相手だと感覚も鈍る。また滅多にやられることもないから、隙が生まれるしな」


 アモンの解説はもっともだった。

 レベルが高くなった者は、周りが弱い魔物ばかりになってしまい、真剣に戦うことなどなくなってしまう。


「……ワタシは、魔物一匹一匹に真剣に挑んでいる」


「本人はそう思ってるかもしんねーな。けど、ずっと強い敵と戦わずにいると、背筋がぞくりとすることも、恐怖と緊張でじりじり焼かれることもねー。ただの弱者に囲まれた強者だ」


 アモンはエンビを真っ直ぐ見据え、彼女を誘う。


「魔王の側になれ。そしたら、お前を超える強者に囲まれて、お前の望む高みへと登ることが出来る」


「断る」


 きっぱりと言い切ったエンビに、ため息を吐くアモン。


「こんなに毎回、誘ってんのによー。つれねーやつ」


 頭をポリポリと掻きつつ、ひとつ息を漏らす。


「しゃあねぇ、まあ続きをやるとするか」


 エンビの射抜くような瞳を受けて、アモンも爪を構える。彼女は少し考えを巡らし、アモンに向かって行った。何度も金属音が交わり、戦いの激しさを物語る。


「また正攻法か。それじゃ足元を掬われるぞ」


 呆れたアモンが爪でエンビの刀を封じる。


 エンビは刀を封じられるが、「村雨」と刀に呼びかける。


「!!」


 刀はビリビリと電気を帯び、やがて普通の人ならばひとたまりもない高電圧を発した。


「いてっ、いてててっ」


 慌ててエンビの刀を解放するアモン。


「そーいやお前の刀、村雨はれっきとしたマジカルステッキだったな」


 エンビのマジカルステッキである、妖刀村雨。


 村雨は、彼女の思いに呼応して、無詠唱で魔法を発生させたり、あらゆる魔法を無効化したり、姿形を変えることが出来る、エンビの頼もしい愛刀だ。


「お前、魔法をあまり使わないから、ついつい魔法少女ってことを忘れちまう」


 アモンは「参った参った」と、まだビリビリする腕をぶんぶん回す。


「さあ、今度はどうするんだ?」


 アモンは余裕の笑みを浮かべて、エンビに尋ねる。



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