第42話 悪魔アモン

「次の相手は誰だ?」


 ワープ先に転送された魔法少女たち。


 ミザデレールは、辺りをキョロキョロとして、悪魔を探す。


 室内は青い大理石の床、窓からの風でたなびく赤いカーテンに、ランプが至る所に配置されている。物のない大広間だ。


「おう、来たか」


 そう言って座っていた木のイスから立ち上がる者がいた。


「お前は……っ」


 エンビの声が部屋に響く。


 後ろに撫でつけた白黒の髪に、瞳は青色。身体は筋骨隆々で、剥き出しの胸板は逞しい。下には、皮のパンツを履き、黒のショートブーツといったシンプルな格好だ。


 その彼の名はアモン。

 男気溢れる面倒見のよい悪魔だ。


「また逢ったな、魔法少女たち」


 気さくな様子で手を上げたアモンに「貴様……」と、エンビが刀のマジカルステッキに手をかける。


 それに気付いたアモンが、


「よおエンビか、久しぶりだな」


 と、笑顔で対応する。


「次はワタシにやらせてくれ」


 闘志を燃やすエンビ。


「少しは強くなったのか?」


 アモンが弟子を見るような眼差しで、エンビを見る。


「今度こそ、勝つ」


 エンビの様子に、他の魔法少女たちは、


「エンビ、本気ですわね」


「あーなったら、止めてもやるからなぁ」


「エンビに任せよう」


 彼女に一任することに決めた。


「さあ、来い」


「おいおい、相変わらずのせっかちさだなあ、お前は」


 エンビは既に鞘から刀を抜き、臨戦態勢だ。


「わかったわかった。さっそくやるか」


 全然、話を聞かねーな。


 と、ひとつぼやいて、アモンも戦いの準備運動に、身体をボキボキと鳴らす。


「じゃ、始めるとするか」


 アモンが言い終わるか否かの内に、エンビは動いた。



 ガキイィイィン!


 エンビの刀とアモンの嵌めた爪が、互いに音を鳴らす。


「どんだけ俺と戦いたかったんだよ」


 ギイィンっと、音を立ててせき止めた刀を爪で払う。弾かれたエンビは、すぐに態勢を立て直し、アモンに向かう。


「あのな、前にも言ったけどよ。お前はなんでもかんでも一直線過ぎなんだって。わかるか?」


 アモンが話す間にも、ぶつかる金属音が響き、エンビと彼の激しさが伝わってくる。


「たまにはよ、ズルやフェイント、予想を上回る動きをしないとなっ!」


 エンビの左横腹を狙う爪に、すぐに彼女は刀を振り下ろす。


「がっ!」


 しかしそれはフェイントで、左横腹を狙っていると見せかけて、左の爪でエンビの右肩を狙った攻撃であった。

 エンビは右肩を引き裂かれ、レースのシャツから地肌が、血とともに見えていた。


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