第26話 魔王アレキサンダー・ルシファー

 ドクドマ洞窟を抜けると、そこは毒の沼と霧が漂う沼地だった。


「相変わらずの毒々しい風景描写ですこと」


 エミュルは手で口元を覆いながら言う。


「空気を吸ったら、ひとたまりもないな。アザリ、バリアー、ありがとう」


 アザリのバリアーのおかげで、この地を楽々と進めることを、エンビは感謝した。


「エンビはわかってるよね。みんな、もっと僕を褒めて?」


 調子に乗るアザリを無視して、ショコラが言う。


「魔王城まで、もうすぐですね。また色々な仕掛けが、私たちを待っていることでしょう」


「……魔王に逢うのは、これで何度目だろうな」


「何度も支配されていますからね。その度に、あの神がお嬢様に頼み込むものですから……本当一度、絞めますかね」


 トテトテ歩くユーリアと歩調を合わせ、ショコラは答える。


「おや、魔王城が見えてきましたよ」


 ショコラが話すと、禍禍しい様子の魔王城が見えていた。


「相変わらず、でけぇーな」


 ミザデレールが驚くのも無理はない。


 西洋風の城は、縦横に広がって大きく、この沼地で存在感を放っていた。


 城全体は漆黒で彩り、地面は草木も生えず全ての生命を宿さない。


「ねえ、あれって……!!」


 アザリがみんなに声をかけると、皆そちらを見た。城の前にある人影が立っていた。


 もちろん、魔王である。


「魔王っ!!」


 駆け足で寄る4人。


 ……ユーリアとショコラは普通に歩いていたが。


「久しぶりだな、魔王」


「今度こそ、やってやるぜ!」


「負けませんわよ」


「ユーリアと旅が出来たから、感謝するよっ」


 アザリの言葉に「おいっ!」と、3人から突っ込みが入った。


「エンビ、エミュル、ミザデレール。それから……」


 向こうから歩いて来る2人の姿を視認して、魔王が続ける。


「ユーリア、ショコラ。前回と同様のメンバーが揃ったか。我はこの時を楽しみにしていたぞ」


 魔王が笑う。

 魔王、その名はアレキサンダー・ルシファー。


 その容姿は、頭に2本の山羊の角を頂き、短いオレンジ色の髪に毛先を遊ばせ、それをカチューシャで止め、黄色い瞳には冷酷さを覗かせる。その身に纏うのは、黒いマント、白いシルクのブラウスに黒いスラックス、茶色のブーツを履いていた。


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