第18話 エミュルとミザデレール

「白魔法は得意ではないが……」


 トコトコとショコラの元に戻り、彼の体に小さな手を翳す。


「お嬢様……」


「白魔法は中級までしか使えない。何度もかけないとならないな……」


 柔らかな光がショコラの体を包む。


 白魔法の光でも、攻撃魔法でなければショコラにダメージがいくことはない。ミザデレールの規格外な光がショコラにダメージを負わせただけで、上流悪魔の彼に普通の魔法少女が傷をつけられはしない。


「お嬢様はお優しいですね」


「そうか? 割と自分勝手だぞ?」


「ずるいずるいっ! 僕も治療されたいよっ!」


 アザリのちゃちゃいれを無視しながら、ユーリアは真剣な表情だ。……相変わらず開きっぱなしの、三角お口ではあったが。



 ──


 ────


 ショコラの傷は、なんとか8割型治った。


「ご迷惑をおかけしました。……今度からは、パワー型の単細胞の方を、おちょくらないように致します」


「うむ」


「ねえ、2人が起きたみたいだよ」


 ミザデレールの傷を魔法で塞いでいたアザリが言う。


「あれ? アタシ……」


「ここは、どこですの?」


 2人が体を起こして、辺りを見渡す。ミザデレールの力で、辺りの建物は崩壊していた為、ルプトプラスの街の面影はもはやない。


「ルプトプラスの街です」


 ショコラが答えると、ミザデレールはあっ! と声を出した。


「おまえはショコラ! さっきおまえと戦っていたような気がするぞ!」


「さようです」


「あれ、ショコラがいるってことは……」


 素早く視線を走らせて、ミザデレールは彼女を見つける。


「姐さん! やっぱり姐さんじゃないっスか!」


 バタバタと走り寄って来て、ユーリアを抱きしめる。


「会いたかったっスよ~」


「そうか、久しぶりだな」


 再会を喜ぶミザデレールは、ユーリアから体を離して、彼女の両手を握り締めながら続けた。


「ルプトプラスの街から姐さんの家まで近いのに、なんで会いに来てくれないんスか!」


「お前が来い」


「ルプトプラスの街を守らなきゃいけないせいで、持ち場を離れられないんスよぉ」


 あのアホ神のせいで! 苛立たしげにミザデレールは言葉を吐く。


「そうですわ、あの神のせいで……わたくしはルプトプラスを守るのを希望したのに、こんな奴に任命するなんて……っ!」


 黒いブーツをザクザク鳴らしながら、エミュルがこちらに来る。


「じゃあおまえが守ればいいじゃないかよ、めんどくせぇ」


「あれでも一応、絶対神ですわよ。逆らえるはずないでしょう、このお馬鹿」


「バカとはなんだ、バカとは。ああんっ!!」


「もう一度、戦いましょう」


「いいぜ、やってやるぜ!」


 2人がまた戦いだしそうなので、ユーリアが口を挟んだ。


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