第16話 覚醒したミザデレール

 マジカルステッキの力を借りず、自らの肉体に宿す聖なる力を覚醒させ、ミザデレールは窮地を脱した。そして見事にショコラに一発、渾身の拳をお見舞いしたのだった。


「んん……」


 その時、緊張感のない声がショコラの耳に入る。


 ショコラの主である、ユーリアが唸った声であった。


「……ユーリア様が起きる前に、決着を着けなくてはいけませんね」


 口元の血を左手で力任せに拭き、ショコラは呟く。


「やってやるぜ!」


 ショコラの考える時間などお構いなしに、ミザデレールが向かって来る。


 繰り出される拳は、一発一発が重く、ショコラはかわすも、ミザデレールのまとう闘気が頬を掠め傷がついていく。


「ちょろちょろにげるなぁっ!」


 彼女の内から迸る聖なる光が、さらに強くなった。


「くっ……」


 その光に圧倒され、ショコラは体の芯がびりびりする感覚に陥った。


「!!」


 よろめいた自分にショコラは驚く。

 あまりの光の力に、闇の存在であるショコラはダメージを受けていた。


「さっきまでの余裕は、どうした? これが魔法少女の意地だっ!」


 ミザデレールはマジカルステッキを手に握り、ショコラに飛びかかる。


 逃げる一方だったショコラも、流石に攻撃を仕掛ける。フェイントを混ぜて、トリッキーな動きでミザデレールを翻弄する。


「やっと本気出したなっ!」


「……さっきは貴女があまりにも弱かったからですよ」


 喜ぶミザデレールに呆れながら、ショコラは答えた。


 そろそろ、ですかね……。


 心で呟きながら、ショコラはタイミングを見計らった。


「オルフェン・ニュクス」


「同じ技は、通用しないっ! ふんっ!」


 ショコラの技をまたも打ち破りながら、マジカルステッキで突きを目にも止まらぬ速さで出す。


「セピア・ヒュプノス」


「!! なんだこれっ!! 前が見えないし、なんだか眠い……」


 ショコラが足払いをする。がくんとミザデレールは膝をつき、彼女は叫ぶ。


「くそっ、コイツを倒すにはもっと力がいる……」


 地鳴りを響かせて、ミザデレールの光が辺り一面に放出する。彼女の内なる願い、「コイツを倒したい」という想いに、体が反応し、強力な力を生み出す。


「はっ! ユーリア様……!」


 巨大な力の放出に戦いを止めて、ショコラはユーリアの元へ駆けだした。街全体を光が覆っていく。


「うわぁっ! ちょっとヤバいって!」


 戦いを見ていたアザリは、すぐさまバリアーを張り、光の攻撃から守る。


「ショコラ、ユーリアを連れて来てくれっ! ああ、間に合わない……ユーリアーー!!」


 光が街を飲み込み、全てが破壊された──。


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