第15話 ミザデレールの力

「来ないんですか? なら、此方から行きますが……」


「今、手を考えてんだっ! せっかちな男は嫌われるぞっ」


「……貴女に嫌われた所で、痛くも痒くもないんですがね」


 ショコラはそう言いつつも、じっと相手の出方を待った。数秒の時が流れる。


「……決まったぜ」


「それは良かった」


 ミザデレールは動いた。マジカルステッキを握り、それをバトン投げのようにショコラに向かって投げつけた。


「やけを起こしましたか」


 ショコラはマジカルステッキをキャッチし、地面に投げ捨てた。その間に間合いを詰めたミザデレールは、キックをかました。次々に繰り出される右足のキックを、回避しながらショコラは言う。


「本当に肉弾戦の方が、合っているみたいですね。格闘家にジョブチェンジしてみては?」


「減らず口を閉じろっ!」


 バシッと掴まれた右足。ミザデレールは動きを封じられてしまった。


「来い、マジカルステッキっ!」


 後ろからびゅんっと風が吹き、ショコラは瞬時に判断して彼女の足を離して距離を取る。

 ミザデレールの右手には、戻ってきたマジカルステッキが握られていた。


「主人に忠実な魔法の杖ですね。ですが私も、忠実という点は譲れませんよ」


 ショコラはその顔に、営業スマイルを貼り付けた。


「オルフェン・ニュクス」


 ショコラが唱えた途端、ミザデレールの足元に闇が広がる。それは彼女の足に這い上がりまとわりつく。


「く、くそっ……」


 まとわりついた闇は腕まで迫り、完全にミザデレールの動きを封じてしまった。


「ちょっと遊びが過ぎましたかね? これで終わりにしましょう」


 ショコラがミザデレールに近づく。


「ぬぬぬ……っ」


「無駄です。これはまとわりつけば、私が解くまで放しませんし、貴女は解く魔法をお持ちではないでしょう?」


 懸命に藻掻き、逃れようとするミザデレールに、冷酷に告げる。


「さあ、少々眠って頂きましょう」


 ショコラが彼女の体に攻撃を加える瞬間、


「魔法少女、舐めるなよっ……!!」


 ミザデレールの体が輝き始めた。


「これは……!」


 光によって闇が溶かされていく。


「ふんぬっ!!」


 最後はぶちぶちと、闇夜を力任せに破り捨てた。


「まさか、覚醒したのか……っ!」


 驚くショコラの視界が揺れた。ミザデレールが、強烈な拳を繰り出したからだ。


「くっ……」


 ショコラの口元に血が流れる。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る