第12話 リココ平原

 エミュルを追って、ジェロミーゼの町を後にしたユーリアとショコラ。

 いま現在、リココ平原に来ていた。


「しかし、こう雑魚達に襲われると面倒臭いものですね」


「つかれる……」


 このリココ平原は、魔物達がわんさかと出る平原で、初心者の冒険者や弱い魔法少女達のレベルアップにうってつけの場所。

 しかし、ある程度の強さのある者にとっては、もはや魔物達の量の多さに辟易する面倒臭い場所でもある。


「プギャアア」


 ユーリアはヒップアックで、300匹目の魔物を倒した。


「キリがないですね。逃げてもいいんですが、魔物達はしつこいですからね。各地に守りの魔法少女達がいない今、次のルプトプラスまで侵入してくる可能性がありますし」


「ねむい……」


「ユーリア、大丈夫? 無理は禁物だよ」


「そうですよお嬢様。ご無理なさらず私の背に乗って……ん?」


 普通に会話してしまったが、この声は……。ショコラは男の声がした方を振り返る。


「ここは補助魔法が使える僕に任せて」


 いつの間にか追いついていた、アザリが立っていた。


空間当止くうかんとうし!!」


 アザリが唱えると魔物達を弾いて、ブルーの薄い膜が3人を包んだ。


「バリアーを張ったからね。もう大丈夫だよ、ユーリア」


「たすかる……」


 魔物達がどんなに突進しても、バリアーは破れない。


「あとは、これもだね。隠姿消影いんししょうえい!!」


 唱えると、バリアーに突進してきていた魔物達は目標を失い、戦闘態勢を解いた。


「これで僕達の気配を消せたから、安心して進めるよ」


 ユーリアの頭をなでなでしつつ、説明する。そんなアザリを苛立ちの籠もった表情で見やりショコラが言う。


「方向音痴なのに、よく追いつけましたね」


「カンタンなことさ。ユーリアの匂いを辿ったんだ」


「!? お嬢様に触らないで下さいますかっ! この変態ストーカーがっ!!」


 ユーリアを引き寄せ、庇うように自分の後ろに隠すショコラ。


「ちょ、誤解しないでよ。僕じゃなくて神獣のカラスがね」


 話によると道に迷っていた時に神仏に祈っていたら、空から一羽のカラスがやって来て、道案内をしてくれたらしい。神仏に仕えるだけあって、神や御仏の加護があるようだ。


「ちなみに、ユーリアを冒険を手助けするように僕を派遣したのも、神仏だよ」


「……神仏も余計なことをしましたね」


「さあ、次はどこに行くの?」


「ルプトプラスの街だ」


 そうして一行は、ルプトプラスの街へ楽々と向かうことが出来た。


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