第10話 最後の一匹

「はっ!!……あ、いや、もう本当、降参です。すみませんでした。へへへっ」


 ペコペコと頭を下げ、敵意がないことを示す。


「そうですか」


 踵を返し、ショコラの煌びやかなコートの裾が舞う。

 その後ろでモウシンは、顔を笑いの形に歪める。


「……なんてなっ」


 ショコラが後ろを向いた所で、モウシンが彼に拳を繰り出す。


「相手が油断した所を襲う。定石ですね。

ゲスらしくて、いいと思いますよ?」


 そう言うや否や、ショコラはユーリアを抱えたまま、左足で強烈な回し蹴りを後ろにし、振り向き様、倒れた魔物の頭に右足で

かかと落としをした。

 衝撃で、魔物の頭が地面にめり込む。


「ぐ、ぐふっ」


 うめき声をひとつし、猪の魔物、モウシンは動かなくなった。


「やれやれ。お嬢様が起きたらどうするんです」


 ショコラの首に抱きついて眠るユーリアを、その胸にしっかりと抱き直した。


「いいなぁーいいなぁー。僕もユーリア、抱っこしたいなぁ」


 未だに痺れて地面で身動きが取れなくなっているアザリは、羨ましそうに言う。


「……」


「えっ? ねえ、ちょっと。何をやってるの? 魔物達を片手で掴んでどうする……」


「ふんっ!!」


 ショコラが声と共に、アザリに向かって、倒れた魔物達を投げていく。


「ぐえっ、ぐふっ」


 と、うめくアザリにはお構いなしに彼の上に投げていき、そこには大きな三角お山が出来上がった。


「穢らわしいけだものが!!……そこで大人しくしていて下さい」


けだものはお前だろーっ!! どけてよ、これ。あ、ちょっとユーリア連れてどこへ行くの!? 待ってよ、置いてかないでーっ」


 アザリの叫び虚しく、ショコラはユーリアを連れて目指す町、ジェロミーゼに向かった。


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