第9話 それぞれの強さ

 魔物達が次々と倒れていく。

 蝶達は、痺れ粉を振り撒いていたのだ。その蝶達を操るショコラは、右手の人差し指でリズムを取るように、動かしていた。


「おや?」


 わなわなして倒れているアザリに気付き、ショコラは声を上げた。


「すみません。蝶達に、貴方も敵認識するように命令していました」


 悪びれもせずに平然とのたまった。


「お前なぁ~っ!!」


 どつきたくても体が言うことを利かず、アザリは無念であった。

 そんなアザリを放置しショコラは、ユーリアをその緑の瞳で探す。


「さて、お嬢様は……」


 ショコラの視線の先、数メートルほど離れた場所に、ユーリアはいた。


「めんどい……」


 彼女は、手を前に垂らしたノーガード姿勢で、魔物達の攻撃を回避していた。


「ちょこまかと逃げやがって、いい加減……大人しく、し、ろぉー……」


 ユーリアは逃げるだけで攻撃はしていない。なのに、猪の魔物であるモウシン達は体力を消耗させていく。


「なんで、だぁ……力が抜けていく……」


 ゼエゼエと息を切らせながらも、力を振り絞る。その間にも、魔物達の力は無くなっていった。


「頃合いか……」


 ユーリアがそう呟いたのと同時に、魔物達は一斉に倒れた。


「ううっ……」


 と、うなり声を上げる魔物達の脇を通り、ショコラが近づいて来た。


「お見事でございます、お嬢様」


 ユーリアに賞賛の拍手を贈るショコラ。ちらりと地面に倒れた魔物達を一瞥してから、


「敵に気付かれずに黒魔法、エスイナジーで相手の力を奪い取るとは、流石ですね」


 仕える主の能力を褒める。


「うむ。少々、疲れた……」


 そう言ってユーリアは、その場に立ったまま、くうくうと寝てしまった。


「おやおや。お疲れ様でございます」


 ユーリアを起こさないようにそっと抱っこをして、ショコラは一匹残る魔物に近づく。


「ぐ、くそぉおー」


 自分の部下達が皆やられてしまい、モウシン達のリーダー格、つまり雑魚の親玉は焦る。


「で、貴方はどうされますか?」


 魔物の元まで来たショコラの冷徹な瞳に、ぞくりとし、最初の態度とは打って変わり、モウシンはヘラヘラと話し出した。


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