『王都』での『王と』の『嘔吐』する謁見という越権という嗚咽の件

『白狼騎士団バンザーイ』『ハーシュ団長バンザーイ』


 何やら文官的な方々が歓迎しているが…お前等、本当にこの狂犬騎士団を入れて良いんだな?

 俺は知らんぞ?どうなってもな…


 王様、それに王妃に姫、王子まで揃っているよ?なんか起きたら地獄だよ?

 

「白狼騎士団よ、よくぞ辺境の反乱を沈めた。これで帝国との戦に集中出来るぞ?近うよれ。」


「「ハッ!」」

「ハッ!ハッ!ハッハッハッ」


 ズシン、ズシン


「レトリバンヌ、落ち着け…舌は出すな…」


 俺は隊長の一人である、レトリバンヌの背中を優しく撫でる。

 レトリバンヌは獣爪部隊の隊長であり、重装とかかっている歩兵部隊の隊長だ。

 戦場では他の縦横無尽に暴れまわる奴等と違い、重盾を持ち本当に真っ直ぐ目的地に向かう。

 そしてレトリバンヌは巨体を持つ♀の犬種族…多分、ゴールデンレトリバーかな?


「イモ!凄いね?お城!凄いね?凄い!スゴッ!「シッ!」ビシッ!


 俺はカリスマドックトレーナー方式で、鎧の隙間から身体をタッチして発言を止めた。 


 声がデカいんだよ…レトリバンヌは俺より頭1個分はデカいボルゾイーヌより、更に頭1個分デカく身体もボルゾイーヌは引き締まったモデル体型だが、レトリバンヌはムッチリ巨乳だ。


 性格は天真爛漫…だが戦場では巨大な十字架の形をした槌と盾を持つ重装歩兵、そして一応シスターだ。

 ただし、祈る姿を見た事ないが…


 コイツはコイツで問題がある。

 油断すると消えるのだ。道に迷うとかじゃない。

 どこかへ消える。蝶々とか追いかけてそのまま消える。

 部隊はレトリバンヌについていくので部隊ごと消える。

 また、レトリバンヌは身体能力が異様に高い、力が強く耐久性は群を抜いており基本刺されても死なない…だから消えても大概戻ってくるのだが…代わりに思考や技術に問題がある。 


 ちなみにもう一匹、じゃないもう1人、ダクスフンという工作部隊の部隊長がいるが人見知りの為、もう半年近く顔を見ていない。これも♀だ。

 指示を出すとやることはやるので、多分聞いているんだと思う。


「さぁ、麗しい部隊長達…近くによって顔を見せたまえ」


 金髪のイケメン王子も促してきた。


 残念ながら…まず一匹…いや1人いないし、麗しいとなると俺とトサイーヌは関係無いだろう。

 誰が誰だか分かってないみたいだし、麗しいのはハーシュとボルゾイーヌぐらいだ。次点でロリコンならチワワンか、巨漢が好きみたいな特殊な性癖であればレトリバンヌか…

 ダクスフンは最後に見たのは土まみれの顔だったから分からん。


『ペっ!』

『ペッ!』

『シャーっ!』


 一瞬だった。


 目を話した隙にボルゾイーヌが王子の足元に唾を吐いた。

 チワワンが王妃にマーキング(小)をした。

 そしてハーシェは…王様の顔面に唾を吐いた…


 後ろでトサイーヌが自分は何をしたら良いのか分からなくて混乱している。

 安心しな!トサイーヌ、俺もだ。


 黙っていると…というか思考を停止しているとハーシェがいきなり何故かドヤ顔した。


「これが我々、白狼騎士団の臣従礼ですわ!」


 そんな訳ねーだろ…そしてレトリバンヌは気付くと消えていた。

 遠くの噴水でなにか生き物が水浴びしてるのがきっとレトリバンヌなんだろう…


「貴様ら!無礼であろう!ここは王宮だぞ!」


 宰相が騒ぐ、そうなんですよね。

 そうです、仰る通りです。しかし王様は…


「まぁ良い、今日は君等に会わせたい者がいてな。対帝国の秘密兵器、召喚勇者のレイヤ殿じゃ」


 顔につば吐かれても、まぁ良いのかぁ…ぼーっと見ていると、玉座の横から王女と共に転生前の世界で言う所の…調子に乗って髪を尖らせた様な、高校デビューの陰キャみたいな若者が出てきた。

 

「俺は異世界からやってきた勇者!レイヤだ!」


 自ら勇者と名乗る男の子、レイヤ君。


 この世界、勇者なんて職業無いからな。

 勇ましい者、その名は勇者。

 召喚された時、自分で名乗ったんだろう。

 俺も異世界から死んで転生してきたが、勇者を名乗る事は出来ないな。

 何故なら恥ずかしいからだ。彼の場合、召喚だから現世に戻るのだろう。

 旅の恥はかきすてとでもいうのだろうか?

 いや、まだ若い。きっといい思い出になる。


「皆さん、僕のパーティメンバーに…入ってくれますよね?」


 キィィィィィン


 あ、スキル使ってる音がする。

 彼の周りの空気がぼやける。ただ、ちょっと不安なのか敬語だ。


「トサイーヌ、彼はスキル使ってるぞ?なにするんだろうナ?」


「えぇ!?イモダス様のスキルと同じやづでずが?だ、みんなぁ…大丈夫でづが?」


 どうなんだろうな、と思ったら前で王様に失礼な事をしていた3人が動いた。

 片膝を付きレイヤ君に忠誠を誓う体制を取る3人。


「私、ハーシェは白狼騎士団団長を辞め、レイヤ様に忠誠を誓いますわ!」


「同じくボルゾイーヌ、忠誠を誓いますわぁ」


「ボクはチワワン!貴方の包丁になるよ!」


 包丁?いや、それはともかくあっさりと忠誠を誓った。

 凄いな召喚された奴のスキルは…以前調べた事があるが、召喚された奴は転生の十倍以上、スキル効果が高いらしい。

 例えば俺は、本能が動物の奴を調教して初めて効果が出る。

 

 ただ、彼の場合は一瞬でかかった。スゲー楽だな。

 

「という訳で副団長さん。彼女等は僕の物だ…良い…ですか?」


 途中で敬語に変えた、彼もまだキャラが固まっていないんだろう。

 悪い奴じゃなさそうだしまぁ良いか。ノッてやろう。

 でもとりあえず言ってみる…


「なん……だと……!?皆、どうしちまったんだ!?」


 多分、魅了か洗脳かわからんが、なんかしたんだろ?

 まぁなんでも良いんだよ。ハーシェが仰け反りながらレイヤ君の前に立ち叫ぶ。


「白狼騎士団は解散ですわ!私は勇者、レイヤ様に付いていきますわ!そこの醜い貴方は何処ぞで野垂れ死になさい!消えるのですわ!」


 そうだな、頑張れ。そして帝国と戦え。

 元々俺は羊飼いだったからな。普通に故郷に帰りますね。

 あ、でもトサイーヌは欲しいなー。でもとりあえず……


「クソッ!皆、仲間じゃなかったのかよ!((泣))」


 って言ってみた(笑)

 良い演技してるわ、俺。アカデミー賞もとれ…


『オエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!』


 ハーシェが突然、王様に向かってゲロを吐いた。


「オエッ!?ハァハァ…この感情は何ですの?貴方を見ていると…貴方をっ!?うああっ!?」


 急に吐きながら涙を流しこちらを睨むハーシェ…やだ、怖い…


「クソ!悔しい!追放された!それでは皆さん、白狼騎士団は解散らしいです、覚えてろよ(棒)、さようなら!」


「え!?あ!ちょっと!」


 レイヤ君が引き留めようとしていたが、俺は嫌な予感がしたので早々に切り上げた。

 忘れてた、ハーシェは俺の調教を超えて来るような奴だ。

 今、自力で解こうとしたな、マジかよ…そして忘れてた。

 

「あ!トサイーヌ!暇なら来てくれ!」


「えぇ!?あ、あい!づいていぎまっざ」


 よし、トサイーヌ確保!こうして俺とトサイーヌは王宮を後にした。


 多分、もうちょっとちゃんとした流れがあったのかも知れないが、ハーシェがヤバい感じがしたから逃げた。スマンなレイヤ君。


 それに俺の方を見ていたもう2人。

 チワワンは匕首持ってぷるぷるしてたし、ボルゾイーヌは口から血が見えた。


 アイツら駄目だろう、自力で魅了解いたら…

 

「ドコ、行くんでさ?」


「あぁ…騎士団解体したら団員はハーシェの実家に行くようになってるから安心だ。お前も行きたきゃ行っていいぞ?」


「いやぁ、あっしはイモダス様に拾われなければしんでだがら、ついていぎやすよ」


 そうそう、トサイーヌはこういう奴だ。

 そして騎士団でもハーシェに次ぐ実力がある。

 

 俺は安心して、これから異世界のスローライフを楽しむ筈だったんだ…これから…だったのに…





―――――――――――――――――――――――


「ようやく会えたな?白狼騎士団、副団長イモダスよ…」


 失敗した、何でだよ…実家の帰り道で攫われるなんて聞いてないよ?


「我はマスティフ帝国、ピブル帝である。面をあげよ」


 金色の巻き毛に豪奢な鎧、美しくも恐ろしい女帝とは…何よりもその目。

 まるで生き物として完全に餌としてしか見られていないような…恐ろしい捕食者の目。

 

 白目の中にある金眼…これが一代でマスティフ帝国を築き上げた女帝…ピブル帝か…


「これから貴様の裁判を始めようか?」


 ここは王国と真っ向から戦争しているマスティフ帝国。

 その玉座に座るピブル帝の前に…俺はいる。


 一難去って、また一難とは、この事だわ。


 

 



 

 

 




 


 

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