第五作 別詩 妖
一体の妖が居た
変化が得意な妖は
自らの姿を変えては
人間社会を泳いだ
現実でも仮想でも
慈愛の溢れる乙女へ
冷酷残酷の淑女へ
豪快な快活青年へ
知性を秘めた紳士へ
数え切れない変化
相手の望む姿を察して
近づけも遠ざけもした
それでも共通すること
そこにいるだけ
妖は居るだけだった
自由に存在しただけ
与えるも受けるも
居ることへの付随
なのに与えられた
無数の役割を
妖にできることは
変化だけなのに
頼られ馬鹿にされ
拒絶され歓迎され
他人からも自分でも
傷口を鮮やかにした
変化を繰り返した妖は
次第に思い詰める
自分が何者なのか
分からなくなっていた
元の姿が解らない
戻り方を忘れてしまった
生まれた時は確かに
元の姿があったはずなのに
解らないとさめざめと
ならば忌わしい妖らしく
山奥にでも引き籠ろう
誰の声も届かない所に
何色だったのだろう
何が好きだったか
何を食み生きてきたか
幾度となく書き留める
果たして私は
妖なのだろうか
それすらも疑い
自らを取り戻す
いつになるのか
何になるのか
妖であるのか
人であるのか
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