第六作 飛絮漂花

未だ見ぬ安息

愛おしい憎悪

黒の塊を抱き

覚束無く彷徨う


歌声に縋り

知恵に請い

言葉に興じ

洋琴に聴き


音と現実の狭間

混ざり泳ぎ

全てに染まれず

ただ浸るのみ


浮かぬ足取り

闇雲に霧を過ぎ

その先に現れた

懐かしき橙の音


入り込む

入り込む

深く沈む橙が

私に染み込む


魅惑とは

衝動とは

どうしてこうも

私を捉えるのか


橙の魅惑に

黒影を見る

内なる奏音

塊は疼く


橙を橙と

愛おしむ

二度目の舞

演じぬと


「違う」

「違う」

「黒と橙」

「別物だ」


そう思う事が

大いなる侮辱

見て見ぬ振りで

海底に封じよう


堕ちた海底に

背を向けて

橙の光を浴びる

触らないように


気まぐれの光を

ただ浴びるだけ

黒も橙も

求めない


求めてはいけない

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