第五作 夢幻泡影

聞こえる

ざわめきが

聞こえる

貶し言葉


翔立つ羽を折る

黒へ変化した手

飛び立つ文を押す

熱気漂う歌声


飛立つ負を包む

波紋広がる知恵

飛び立つ感を潰す

光帯びる諸刃


奏音は聞かない

歓声も聞かない

聞けない聞けない

耳を塞ぐ


貫かれた胸

再生の身体

救われた手に

殺された


救いとは

掬いとは

更なる辱めの

過程にすぎない


逝けばよかった

黒の塊を

黒の手を

黒を重ねる前に


「できない」

「たすけて」

「どうして」

「なぜなら」


『私だから』


生きたかった

行きたかった

逝きたかった

何処へ


楽になれる場所

安息の地

そんなものは

人が知る術もない


奏音の調べを

身に纏い

胸ではなく

首を堕として


書き出づるは

衰退か

逃避か

依存か


才とされる

文字の羅列は

無用の長物

負の遺産


戻れれば

黒を知る前に

才を知る前に

無知の私に


戻れない

黒を抱く前

非情の救い手

愛おしい憎悪

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