第三作 無明因縁

歌声と手と歓声

形を盛り返す私

貫かれた胸は

再生を辿る


蘇る私の身体

一つだけの枷

黒の塊をも

僅かに甦る


溶けきらない

黒の想い

逃げ切らない

架空の罪


歌声は囁く

「本当は無いのよ」

手は包む

「覆ってやるから」

歓声は謳う

「似合わないよ」


心地よく響く音

罪悪感の言葉を

飲み込むように

吐き出すように


胸に溶け残る

黒の塊が動く

手が震える

息ができない


両手に現る

黒の余波

消えては広がる

繰り返す


戻れない

戻らない

戻りたくない

相容れない


縋りに縋る

流れに流る

叫びに叫ぶ

泣きに泣く


「私は平気」

「私は自由」

「私は強い」

「私は翔ぶ」


自我を求める

この意識は

周りを巻き込み

悦に入る


偽の強さを

身に纏う

いつは真に

なるだろうと


偽だろうが

構わない

私が創れば

それが事実


逃げ込む

走り出す

黒の塊を

抱えたまま

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る