田舎の記憶
第2話 田舎の風習1
田舎の風習1
田舎のじいさんが亡くなった。
オレは両親に連れられ、じいさんちに行った。
葬式の手伝いをするためだった。
じいさんちは、じいさんとばあさんの二人暮らしだった。
隣近所におじさん夫婦がいて世話していたが、こういう時は何かと人手があった方がいい。
オレも色々手伝わされた。
「崇は一番若いからマモリばしろ」
崇はオレの名前。
オレは最初何を言われてるのか分からなかったが、説明を聞いてる内に仏さんに夜通し付き添う役のことだと気づいた。
どうしてか発音が違う風に聞こえてすぐには気づかなかった。
方言とはこんなにも難しいのかと思った。
手伝いが一段落し、費用とか今後ばあさんを引き取ることに話がおよんだので、オレは居心地が悪くなり、適当に散歩することにした。
同じく手伝いに来ていた近所の娘も一緒に着いてきた。
子供の頃、よく一緒に遊んだやつらの一人だ。
「あーゆー話、苦手だよ」
その娘はポツリと言った。
まあまあとなだめるようにして歩いてると、例の神社に続く小道に差し掛かった。
「ねぇ行ってみようか?」「え?」
思わぬ誘いにきょとんとしてると、
「昔は、みんなとよくここで遊んだよね」
「うん」
会話をしながら、オレたちは神社に続く道を進んで行った。
神社の境内には誰もいなかった。
午後の陽射しがそろそろ陰り始める頃合いか。
昨日の夕方からこっちに来てずっと手伝いをしていたので、あまり寝てない。
疲れを感じつつ、傍らの娘…八重子の話に相槌を打つ。
「でさぁ、たかしくんたらあそこに女の人がいるとか言ってたよね」
八重子が言った。
何気ない一言だったのだろうが、その時オレの意識に何かが蘇った。
社の向こう側から、ぐっと引っ張られるかのような感覚。
オレは思わずそちらを見る。
居た。
子供の頃見たのと全く同じ容姿の女性。
オレが目を見開き硬直してると、女性は昔と同じように視線を反らした。
「どうしたの?」
八重子の声がして、オレははっと我に帰った。
帰り道で八重子と何を話したのか覚えていない。
ちょっとばかり右肩が重い感じがした。
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