おかしの香り

空港を出てから約1時間、カールは街の中心にある住宅街で車を停めた。

「さぁ着いたぞ。ここが我が家だ。」

エーデルはカールが指を指した方を見た。その家にはこの現代では珍しい煙突が着いており、とても特徴的な家だった。

「さぁ、長旅で疲れただろう。早く入ろう。」

そう言ってカールは後ろに積んであったエーデルの荷物を下ろすと家のドアを開けた。エーデルもカールに続く。玄関に入ると甘い焼き菓子の香りがした。

「お邪魔します。」

そう言ってエーデルは脱いだ靴を揃えて端に置いた。

「本当にさすがコットの息子だな。関心関心!さて、こっちがリビングだ。荷物はここに置いておいて。」

エーデルが荷物を置くと部屋の奥から足音が聞こえてきた。そして部屋のドアが空くと、長い金髪の女性が顔をのぞかせた。

「おかえりなさい。早かったわね。あら、この子が今日から家に泊まるっていうエーデル?」

「あぁ、可愛いだろう。エーデル、紹介するよ。私の嫁のセリアだ。」

「セリアさん、これからよろしくお願いします。」

エーデルはぺこりと頭を下げて言った。セリアはニコッと笑った。

「よろしく。ずいぶんといい子ね〜。ちょっと待ってて。もう少しでクッキーが焼けるから時間もちょうどいいしおやつにしましょう。」

「じゃあ先にエーデルが寝る部屋に案内しよう。着いておいで。」

エーデルは頷いて部屋をあとにした。カールはエーデルに細かく部屋の場所を教えていった。エーデルの部屋はキッチンの隣にある客室だった。その部屋にはテレビやらトイレが備え付けてありとても綺麗な部屋だった。

「ここはあまり使っていないから好きに使ってくれていい。テレビも好きに見るといいぞ。あ、だけどな、そのテレビ最近調子が悪くてなつかない時があるんだが許してくれ。」

エーデルは小さく頷いた。部屋の窓から外を見ると、正面からは見えなかった裏庭が目に入った。家よりも庭の方が広いのではないかと思うほど大きく綺麗に整頓されている。子供でもわかる庭の広さにエーデルは絶句してしまった。そんなエーデルの様子を見てカールはふふっと笑った。

「いい庭だろう。私たちはキャンプやバーベキューが好きで、たまに庭でやっているんだ。良ければ今度やろう。」

カールの提案にエーデルは目を輝かせた。

「あなたー、エーデルくん、クッキー焼けたわよ〜。」

セリアに呼ばれリビングへ向かう。机の上には様々な形のクッキーと綺麗なカップに注がれた紅茶が並んでいた。

「いただきます。」

「どうぞ、召し上がれ。」

クッキーのサクッと心地よい音と優しい甘さがエーデルの口を幸せで満す。子供には味の表現が難しい紅茶もこの時にはとても美味しく感じた。

「美味しい!」

エーデルの言葉にセリアは優しく微笑んだ。



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