ルアロの街

エーデルが乗った車は、空港を出るとずっと海岸沿いを走っていった。潮風の香りに故郷の様子が蘇ってきた。胸のどこかにモヤっとしたものが通ったが、冒険のわくわくがそんな気持ちをどこかに隠してしまった。そして、初めは初対面のカールに緊張していたエーデルだったが話しているうちに、いつの間にか打ち解け、家族の話で盛り上がっていた。

ワイワイと話しながら車を走らせていると、いきなりカールは声を上げた。

「さぁエーデル、見えてきたぞ。ルアロの首都、コルトだ!」

エーデルは前を見た。フロントガラスから見る街並みは飛行機で見たものとは違うものを感じた。コルトの街はレンガ造りの家が並び、童話で出てくるような綺麗な街だった。

「レンガ造りの家が多いね。」

「いい街だろう。君の街ではレンガ造りなんて少ないだろうから珍しい光景じゃないかな。でもな、珍しいのはレンガ造りのいえなんかじゃない。このコルトはな世界でも有数のお菓子の街なんだ!街にはな、飴細工やチョコレート屋はもちろん、遠くの国のお菓子で和菓子っていうのを売ってる店もこの街にはあるんだぜ!まさにお菓子職人になりたいエーデルにはうってつけの街だな!」

そう言ってカールは高笑いした。エーデルも目をキラキラとさせながら、遠くに見える街を眺めた。様々なお菓子を学べる、今のエーデルにとってこれほど嬉しいことは無かった。

「そういえばさ、カールおじさんはコルトでなんのお菓子を作ってるの?」

「俺はな、ひとつのお菓子を作っている訳ではなく、色々なお菓子を様々な工場で作っているんだ。まぁ、いわばお菓子メーカーの社長って立場かな。けど、自分でも新しいお菓子のアイデアを出したり、新作のお菓子を自分で作ったりしてるんだぜ。」

エーデルはカールの顔をじっとみた。尊敬や驚きというのもそうだが、男らしくワイルドなヒゲを持ちながらも、可愛いお菓子作りをしていると聞いてどこかおかしくなり、エーデルはくすくすと笑い出してしまった。





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