カールとの出会い

飛行機の旅はとても楽しかった。今までずっと見上げてきた白い雲を自分と同じ目線で見れる、こんな経験はエーデルの中にあった不安という気持ちをいつの間にか消し去っていた。窓から見える美しい空を眺めている間にエーデルはいつの間にか眠ってしまっていた。

そして起きた頃にはすでに着陸の準備に入っていた。エーデルはすぐにシートベルトを着けた。窓の下にはルアロの首都であるコルトの街並が見えてきていた。コルトはエーデルの住んで居た街とは違い、赤レンガや大きな煙突など、一昔古い街を感じさせるような場所だとコットから聞いていた。見慣れない景色にエーデルは心を躍らせた。

飛行機が着陸するとエーデルはそそくさと外に出た。いつも街で感じる潮風とは違う匂いに自然と心がワクワクしていく。ロビーに行くとエーデルはすぐにカールを探した。コットから言われた情報だと、カールは身長が高くは男らしい髭を持った男だと聞いた。エーデルは辺りを見渡した。するとどこからか自分を呼ぶ声が聞こえた。

「エーデル!エーデル!こっちだ!」

エーデルはすぐにその人の元へと向かった。そしてそこに居たのはコットの話の通り、身長が高く、顎に立派な髭を生やした小太りの男の人だった。

「カールさん…ですか?」

「そーだよ!君がエーデルだね。ルアロへようこそ!コットから話は聞いているよ。」

カールはサッと手を差し出した。エーデルはその手をゆっくりと握ると、カールはニコッと笑ってエーデルの背中を叩いた。

「緊張しなくてもいいぞ!飛行機の旅も疲れだろう。まずは荷物を置きに私の家へ行こう。そしたら今日は軽く散歩がてらに家の周りを探検しようか。」

いかつい見た目とは裏腹に明るい性格にエーデルはほっとした。

「はい。これからお世話になります。」

エーデルが言うとカールは声を上げて笑った。

「さすがコットの息子だな!いい教育をしてる。こちらこそ短い間だがよろしく頼むよ。さぁ、家に向かおう!」

カールは荷物を車に乗せるとすぐに車を発進させた。真っ赤なオープンカーはエーデルの小さな体全体にルアロの風を浴びせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る