エーデルの旅立ち

いよいよ出発の日が来た。空港に着くとコットそそくさと荷物を下ろした。大きなリュックを背負い、よろめきながらエーデルは大きく深呼吸をした。そんな姿を見て、コットは優しくエーデルの肩に手を乗せた。

「なに、緊張することは無い。飛行機でルアロまではたかが3時間ほどだ。向こうの空港にカールが待っていてくれているから迷子になることも無いだろう。」

エーデルは小さく頷いた。体は怖がっていたが目は宝石のようにキラキラと輝いていた。

「カールさんの言うことをよく聞いてね。勝手な行動をしちゃダメよ。あと、家でできるお手伝いはしっかりやってね。」

いかにもルージュが親バカなことを言うのでコットはふふっと鼻で笑ってしまった。そんなコットを見てルージュはムッとし、少し強くコットの肩を叩いた。その瞬間、ハッとし、コットは腕時計を見た。そしてエーデルの背中をポンポンと優しく叩いた。

「そろそろだな。さぁ、エーデル、旅の始まりだ。楽しんでこいよ。」

「気をつけてね。何かあったらいつでも連絡してね。」

エーデルは大きく頷き、飛行機の入場ゲートへ小走りで向かった。ゲートをくぐると大きく手を振り元気よくいった。

「お父さん、お母さん、いってきます!」

コットとルージュが手を振り返すと、エーデルは満面の笑みで飛行機へと向かった。

「しばらく寂しくなっちゃうわね。」

「あぁ、そうだな。だけど今、隣国との関係が明らかに悪くなっている。いつ最悪の事態になってもおかしくない。あの子を巻き込みたくはないんだ。仕方ない決断だろう。この一週間で、最悪の状況になるか良い方向へ進むかが決まる。状況が良くなったらまた会えるから大丈夫さ。」

コットとルージュは外に出るとエーデルの乗った飛行機に向かって大きく手を振った。そして飛行機が見えなくなるとルージュは顔を塞ぎ、涙をこぼした。そんなルージュをコットはぎゅっと抱きしめた。そしては青く澄み切った空を見上げ、平和な明日が来ることを願った。

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