コットの提案

たんぽぽが春を告げるかのように風に揺れている。エーデルは無事幼稚園も卒園した。卒園とはいえ、やはり親的には大きな節目らしく、普段は泣かないコットも卒園式では目をうるわせた。式が終わると、コットはあるものを目にした。卒園する子供たちの将来の夢の絵が描かれた画用紙だ。みんな違った夢を持っており、ある子はサッカー選手、ある子は看護師など、自分の将来を意気揚々と描いていた。そんな中エーデルはというと、何やら料理をしているような絵を描いていた。

「エーデル、これは何をしているんだい?」

コットが聞くとエーデルは恥ずかしそうに答えた。

「パパ、これはね僕がお菓子を作っている時の絵だよ。僕ね将来、お菓子屋さんをやりたいんだ。」

モジモジとしながら答えるエーデルを見てコットは鼻をスズっとすすると、エーデルの頭を優しく撫でた。

「そうか、いい夢だな。」

コットが言うとエーデルは顔を赤らめながら笑った。

いよいよ小学生になるという時だった。コットはエーデルにとあることを提案した。

「なぁ、エーデル。お前も幼稚園を卒園したし、せっかくの春休みだ。少し冒険に出てみないかい?」

エーデルは首を傾げた。

「冒険?僕一人で?」

「あぁ、そうだ。だけどずっとひとりじゃない。近くのルアロって国にな、お父さんの友達で有名なお菓子づくりの名人がいるんだ。そこに遊びに行ったらどうだい?ついでにお菓子作りについて教えてもらうといい。」

コットの提案にエーデルは少し悩んだようすを見せたがすぐに満面の笑みで言った。

「うん!行ってみたい!」

「そうか、わかった!じゃあ来週の土曜日に出発だ!空港までは乗せていってやる。ちなみに友達の名前はカールと言うんだ。どんなお菓子も作れるが、特に飴作りが得意らしい。出発までにあいさつの手紙でも書いておけ。」

エーデルは元気よく頷くと小走りで自分の部屋へ戻って行った。すると一部始終を見ていたルージュがコットの肩を叩いた。

「まだまだだけど、あの子も大きくなったわね。」

「あぁ、そうだな。あのまますくすくと大きくなることを願うよ。」

コットはそういうと鼻をスズっと啜らせた。そんなコットの姿を見てルージュはケラケラと笑顔を見せた。

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