小柄な子供
ある夏の日の事だった。外ではセミの大合唱が夏の始まりを歌っていた。
コットとルージュは病院にいた。ルージュのお腹に身ごもった子供に産期が近づいてきたのだ。つわりで苦しむルージュをコットは必死に看病した。そしてついにその年の秋、ルージュは念願の第1子である男の子を産んだのだ。2人はこの子供に「エーデル」と名ずけた。エーデルという名前はコットが勇気の花言葉を持つエーデルワイスから取り名ずけた。将来は勇敢な戦士になって欲しい、いかにも軍人であるコットらしい理由だ。
しかしそんな期待と裏腹にエーデルは他の子供よりも小柄で、とても大人しい子供だった。マシュマロのように柔らかい頬を赤く染めて笑う姿は、まるで女の子のようだった。コットにはどうしてもこの子が勇敢な兵隊になるとは思えなかった。しかしだからといってエーデルを軽蔑することは無く、コットの中では兵士となって国のために戦って欲しいと思う傍ら、この子には平和な世界で自分の好きなことをして生きて欲しいと思っていた。コットは社会に潜む暗いものを知らずに心地よく眠るエーデルを見て、自分が平和を作ると心に誓った。戦いのない、子供が自由に夢を見る世界、そんな世界を作りたいと心から思った瞬間であった。
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