第4話見習い家事
結局、その日は夕飯はカレーになった。
ホロホロになった具がとてもおいしかった。
私はそれからも、学校終わりには家事を手伝うことになったのだ。
家に居候しているから当然だ。
自分で思っているよりも自分が不器用だと認識してしまう。
実家ではやらなかったということもあるが、
母親のこだわりが強かったのだと思う。
母の想定する野菜の切り方でないと怒られたし、味も母好みでないと怒られた。
生徒会副会長の家では怒られことはない。
しかし、彼のお母さまがあちこち掃除されるので、ついていくとびっくりする。
綺麗なのに、掃除をしている。
私の目には見えないけれど、汚れているという認識のようだ。
「人間と微生物との戦いなのよ。家事のあれこれって」
彼のお母さまは朗らかに笑う。
見習って家事をしてみる。
このお家は合格点が高いので必然的に動く時間が長くなりがちなのだ。
生徒会副会長が帰ってきた。生徒会の関係がある日は帰りが遅いのだ。
「生徒副会長の成績って」
「いつまで役職呼びなの」
「だってちょっと恥ずかしいっていうか」
「じゃ、練習してよ」
生徒会副会長は近くに来ていてびっくりしてしまう。
「
「た、孝明さん」
「うん。そうだよ」
満足そうに笑う彼。
「じゃ、夕飯できるまで、父の書斎にいるね」
「はい」
結局、聞きたいことは聞けなかった。
☆☆☆
日課になってきた夕飯づくりの間に離れた一室で男2人で会話していた。
議題は彼女の将来について。
昨日、父さんから呼び出されていた。
「孝明、あのお嬢さん、拾ってきてどうするつもりだ?」
「ん?」
「器用だと思うし、
母さん1人じゃ大変なことも増えるかなって。
もちろん就活はしてもらうけれど。
もしだめなら家政婦として雇ってあげられないかなって」
「金銭の発生する間柄でいいのか?」
思春期の息子のことだからそれ以外の目論見もあるのではないかと踏んでいたが。
「ほかにどんな関係が?」
「お前、頭いいのに、鈍感すぎやしないか?」
「は?」
「彼女をお嫁さん候補として考えているのかと聞いているんだ」
「あ、まぁありかも知れない。彼女個人なら」
「ほーー」
「けど、結婚とかになったらまた別だろ。
うち金回りいいんだし。
悪用はされたくないし。
彼女の家庭回りは微妙だと思う」
「シビアな息子だ」
「頼もしいって言ってくれるかな」
夕飯ができたと呼ぶ声がする。
お世辞ではなくおいしい料理ができる子だ。
ほんの数週間過ごしただけだが、優しい子だと思う。
親御さんは少し厳しすぎる気がする。
人様のことなので口には出さないが。
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