第3話生徒副会長の家族

 学校の生徒会副会長。

 彼のご両親にそれとなく聞いてみたところ、彼のご両親ともに地方で有名な資産家だという。資産運用もしているし、日本の不動産もいくつか持っているし、外貨もそれなりにあるそうだ。

(すごい。だから彼もグローバルな視点を持っているのね。それだけご両親も博識ならば進学校で余裕なのね)

 ウチのヒステリック具合がなんだか小さな問題に見える。


 彼に紹介してもらって、家に住まわされる。

「こんな贅沢いいんでしょうか」

 実家でもこんなにきれいな服を着せてはもらえなかった。

「コレ、どこかのブランドものとかじゃないですか?」

彼のお母さまはそういう。

「そうよ。嫌かしら」

「そうではなく。私、居候なのですから」

「いずれ変わるかもしれないのに?」

「え? 変わりませんよ」

「あらら。そうなのね」

 彼のお母様はコロコロとかわいらしく笑う。

「ねぇ、ウチには男しかいないから。女の子がいてくれると嬉しいわ。ねぇ隆文タカフミさん」

「そうだな」

「そうですか」

「その、ご迷惑でなければなんですけれど」

 あたまの隅にかすめたのは家事ができないという母の言葉。

「家事を習いたいです」

「いいけれど、お母様からはどうだったの?」

「私、家事出来ないらしくて」

「じゃ、カレー作ってみましょうか。基礎的なことをやってみたらできることとできないこともわかるわよ」

「そうでしょうか」

 「じゃあ、手を洗ってエプロンをしていきましょうか」

(うわ、家庭科で習ったこと本当に実践しているご家庭あるんだ)

驚いたのは自分の母がしないから。自分が学校で習ったようにすると怒るのだ。

「そんなにきちんとしなくていい」というのが母の意見だ。

「どうかした?」

「いえ、キチンしたおうちなんだなぁって」

「そうかしら。きっとあなたのお母さまもそうよ」

 促され、包丁をもち、ジャガイモをむいたり玉ねぎニンジンを切ったりした。

「不慣れだけれど包丁の持ち方だって切り方だってできてるわよ」

「え? 母はできていないって」

「んーと。強いていうならよ。可食部をもっと増やすきり方はできるわ。でも主婦でも毎日は気にできないものだし。子供を育てていたら時間優先なんてざらにあるわけだし」

「愛理ちゃんのお母様ってかなり神経質なタイプなのかしら。そんなに気にすることでもないわよ。子供を産むってまだまださきでしょ? 悲観するレベルじゃないわ」

「はい。ありがとうございます」

彼のお母さまにそういってもらえてなんだか自分はそれでいいんだと自信が持てた。


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