第2話行く当て
行く当てなんてどこにもない。
皆勉強にいそしんでいるし、どこへ行くにも不便だ。
やりたいことなんてない。
「飲食店で最低賃金で働くのかな」
できないことはない。家はどうするんだろう。保証人もないのに部屋を借りられるものだろうか。
グルグルめぐる思考。
安全だったはずの実家。
いきなり敵にすら思える両親。
友人たちは偏差値や内申点を気にしている。
高卒決定の私には関係のない世界になっていた。
進学校だから高卒でいくという子もいない。
前例がないから指導する先生も驚くだろうな。
夜21時。女子高生がふらつくにはいささか危ない時間だ。
でもかえる場所もない。
途方に暮れていた時に声をかけてきたのは
「生徒会、副会長?」
「こんなところでどうしたんだ?」
「行く場所もなくて」
「とりあえずレストランでも入るか」
「あ、お金ないです」
「おごるよ。それくらい手持ちあるし」
「ありがとう」
「それで、どうしてこんなところにいるんだ?」
「学校にも居場所なくて」
「へぇ」
「この時間まで塾ですか?」
「いや。塾には行っていない。独学で志望校A判定だからゲーセン行っていた」
「へ?」
思っていたよりも彼はかなり博識であり、実力も伴っているらしい。
「何を目指してるの?」
「学者だな。日本で研究したいけど、金銭的に生活できるかどうかわからないから英会話も必要だろ」
「うん」
「だから、ゲーマーの外国人と話してた。英語で」
彼はグローバルな視点を持っている。
「行く当てないし」
「ふぅん」
「家来る?」
「え?」
「もちろん親がOKすればだけど、どうしてもだめなら家政婦としてうちで働けばいい」
「え?」
「え? ばっかりだな」
彼はスマホを操作していく。
「親、了承とれたから、とりあえず一緒に行こ」
「ありがとう」
彼の好意に救われた。
☆☆
彼のうちはお屋敷だった。
「ただいま。連れてきたよ」
彼の声にご両親が反応して姿を現す。
「お邪魔します。2年B組の山本愛理です」
「あら。かわいい子じゃない。いらっしゃい。しばらくうちに泊まりなさいな」
「ありがとうございます」
落ち着いてこれからを考えらえる場所ができた。
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