第4話


氷の館がある町はフロストランドの中心地だ。

政治と経済の中心地でもある。

館を中央に円心状に街並みが形成されている。

「いわゆる、なろうタウンというやつね」

マグダレナが妙な事を言っている。

「なろうタウンね」

アレクサンドラもうなずいている。

「うるさいぞ、ヲタクども」

クレアが叫んでから、

「どうやら、金を用いた価値基準は定着しつつあるようね」

報告をした。

「分りやすいことから国内では好まれているようだけど、他国から来る商人達には不評のようね」

「確かに、ここのところ急に交易が縮小しましたわね」

マグダレナが手元に集めたデータを見ながらうなずく。

「えー、なんで?」

静が聞いた。

「あのね、脳筋のシズカさんには分らないかもしれないけど、商売というのは安く仕入れて高く売ることが鉄則なの」

「あー、今、バカにされたー」

「遠い土地の相場なんてお互い分らないんだから、そこで如何に誤魔化して儲けるかが商売の技術とも言えるわけ」

「きっちりとした価値基準があると儲けが以前よりでなくなる訳ね」

フローラが言った。

「でも、これは一時的なものでしょう?」

「いや、そうとも言えない」

クレアは頭を振った。

「商人達が国に帰って噂を流すだろうから、これは我らがフロストランドにとっては不利益になる」

「ああ、私達の世界のように電話やネットですぐ情報が伝わる訳ではないですもんね」

フローラはすぐに理解したようだ。

「対策としてはどんなのがあるかのう?」

スネグーラチカが聞く。

「逆に商隊を組織派遣して積極的に売り買いに行くといいでしょう」

クレアは言った。

「相手がどれだけぼったくっても、こちらはこちらのルールで売り買いをするんです」

「ああ、噂には噂で、ということですね」

フローラはまたすぐに理解したようだった。

「ん、どゆこと?」

「フロストランドの商隊は、融通は利かないけどきっちり支払いをする、ぼったくらないという印象を与えてゆくということよ」

静が首を捻っていると、フローラが説明した。

「商売は交渉も大事だけど、最終的には信用がものを言うのよ」

クレアが言った。

「シズカが社長だとしたら、なんだかんだと理由をつけて金を払わない客や金額を値切ってくる客と、いつもしっかり決めた通りの金額を払ってくれる客とではどっちが良い?」

「そりゃ、キチンと払ってくれる客よね」

「うん、多くの商人もそう思うはずだ」

クレアはうなずいた。

「なるほど、ではすぐに商人と話をしよう」

スネグーラチカは、そのまま外出してしまった。

フットワークが軽すぎる為政者だ。


「あとは発電ね」

マグダレナはそう言うと、館の武官に話をして、製作所へ出向いた。

クレア、静、アレクサンドラも着いていった。

それから武官が護衛として一人、付き添ってきてくれる。

パトラは憲法作成という仕事があるので居残り。

フローラはその手伝い。

「スカジさん」

「あ、皆さんおそろいで」

製作所に着くとスカジが出てきた。

「今日は雪姫様いないのかい?」

「ちょっと用事で出かけてるんだ」

クレアが言った。

「それで、発電機なんだけど」

「ああ、タービンを回す機構だろ。

 構造は簡単だけど一定のスピードを保つのが難しいんだよなぁ」

「ボイラーの蒸気にムラがあるからですわね」

マグダレナはすぐにピンと来たらしい。

「そうなんだ」

スカジはうなずく。

「なんか良い方法はないべか?」

「ちょっと拝見しますよ」

アレクサンドラがボイラーを見た。

「立てボイラーか、せめて水管ボイラーにしないとなぁ」

「水管ボイラー?」

マグダレナが聞いた。

「火力を効率よく蒸気に換える構造のことだよ」

「あー、立てボイラーにはエネルギー効率に無駄が多いってことですわね」

マグダレナはうなずく。

「どゆこと?」

静は理解できてない。

「薪を燃やすと熱が発生するよね」

いつものようにクレアが説明した。

「うん」

「その熱は炉の素材である鉄に伝わって熱くなるでしょ」

「うん」

「炉の熱が隣接している水を沸かして沸騰、蒸気になるでしょ」

「うん」

「この時、発生した熱がどんだけ蒸気に換わるかってこと」

「はあ?」

「あーもう! どんだけバカなのよ!?」

クレアは癇癪を起こした。

「うう…」

静は涙目になっている。

「クレアは言葉汚ねーな」

アレクサンドラは呆れて、後を引き継いだ。

「ここに薪が10本あります」

「はい」

「このボイラーで、10本の薪を燃やしたら、お風呂1回分のお湯が沸きました」

「はい」

「別のボイラーで、同じく10本の薪を燃やしたら、なんと! お風呂2回分のお湯が沸かせました!」

「ほえー」

静は素直に感心している。

「後の方のボイラーは火力を上手く利用して2倍のお湯を沸かせたわけ」

アレクサンドラは言った。

「これを効率と言ってるのよ」

「そうね、今使っているボイラーでは熱効率が低いからもっと効率のよいボイラーを作ろうって言ってるのですよ」

マグダレナがニコニコと言う。

「おまえら、忍耐力あるなー」

クレアはため息をつく。

「あー、そっか、発電機次第では、同じ燃料を燃やしても作れる電力が少なかったり多かったりするんだ」

「お、分ったじゃないの!」

アレクサンドラは、バシバシと静の背中を叩く。

(あ、クレアと同じ人種だ、これ…)

「単純構造の発電機だから、電力にもムラが出るのか」

クレアはうーんと唸っている。

「タービンさえ等速で回せればある程度は安定すると思いますよ」

マグダレナは言った。

「それからポンプな」

スカジがため息をつく。

「これは手に負えないよ、自動で動かすための機構はいいさ、問題は動力についてだ」

「どゆこと?」

クレアが聞いた。

「私は電気ってのを知らない。何をしていいか全く分らない」

「あー、そっか」

アレクサンドラがうなずく。

「スカジさんにとっては電気は未知のものよね。未知のものなんてどうしようもないからね」

「じゃあ、先に発電機を作らないといけないわけね」

マグダレナが言った。

「うん、発電機→ポンプ→水道設備って順にやるべきだね」

アレクサンドラがまとめた。


「おーい」

そこへ護衛の武官が声をかけてくる。


「今、館から伝令があったぞ」

武官は言った、

「商隊が旅の途中で襲われたそうだ、雪姫様が君達に戻ってくるように言ってるらしい」

という訳で、皆、館へ戻ることになった。



「我が国の商隊が帰りの道中で襲われた」

スネグーラチカは渋い顔をしている。

「まあ、撃退したがな」

「さすが脳筋種族」

クレアが言った。

「で、襲ってきたのは誰?」

「商隊の者の話では、今回訪問した国の者らしい。身なりから判別してのことじゃな」

「でも、なんで襲われたのかな?」

静が聞くと、

「推測じゃが、どうも金をたんまり持ってると思われたらしい。金払いが良かったからじゃろう」

「ああ、そういうこと」

パトラが納得したって感じでうなずく。

「旅行先で金を見せびらかさないってのは常識よ」

「犯罪に巻き込まれかねないからねぇ」

フローラも同意している。

「襲撃者の数が多くてな、商隊に負傷者が続出しておる」

スネグーラチカは話を続けた。

「治癒魔法で治させているが、これから先もこういう事があるとすれば医療方面に重きを置きたいのじゃ」

「なるほど、それは大事ですね」

フローラは言った。

「それから商隊の護衛を増やしておかねば」

スネグーラチカは言った。

「護衛もそうだけど、軍隊の編制もした方がいいんじゃない?」

クレアが言うと、

「ふむ、そうじゃな」

スネグーラチカの顔が曇る。

「じゃが、フロストランドの民は腕っぷしに自負するところが大きくてな、力のないヤツのことなど聞かぬのじゃ」

「うわー、じゃあ、ちゃんと強い人が指導しないとダメなのかー」

静が言った途端、

「おい、バカ、やめろ!」

クレアが静の口を塞ごうとしたが、

「おお、そうじゃの、シズカ、おぬしがいたな」

「へ?」

「あと、そういう専門家を呼び寄せておかぬと」

スネグーラチカは嬉々として宣言。


スネグーラチカは三人の少女を伴っていた。

「やっぱこうなったか…」

クレアは頭を抱える。

「いや、ごめんて」

静はあたふたしていた。


三人は自己紹介し始めた。

「ジャンヌ・ダヤン、フランス人だ。軍人を目指している」

「ヤン・シャオヤンだよ。中国人だよ。趣味は太極拳」

「御前巴です。日本人…って、静じゃないか!」

「あ、お姉ちゃん!」

静は肉親の姿を発見して、駆け寄った。

「なんじゃ、シズカの家族かえ」

「はあ、そうなんです」

「静、ここはどこなんだ?」

「えーとね、フロストランドって言ってまあ、異世界ファンタジーみたいなもんだよ」

静は説明をした。

案外、的確かもしれない。

「よく分らんが、日本じゃないのだな」

「うん、まあ」

静は苦笑いをしている。


「今回は武闘派ばっかりだねぇ」

アレクサンドラが感想を言ってる。

「武道家に武術家に軍人か」

「へ? 武術家って無茶いうなよ」

ヤンが、いやいやいやいやと手を振る。

「格闘技とかじゃなくて、趣味だっつーてるやないの」

「…大丈夫か、これ?」

「だーいじょーぶ、練習すれば!」

巴が自信たっぷりに言う。

「じゃ、早速やりましょうか」

「うわ、バトルジャンキー」

「でしたら、こうしましょう」

マグダレナが言った。

「シズカさん、トモエさん、ジャンヌさん、ヤンさんは商隊関係。

 クレアさん、アレクサンドラさん、フローラさんは医療関係。

 パトラさん、私は憲法と法律作成」

「おお、人数が増えると役割分担で同時進行できるのう」

スネグーラチカは喜んでいた。



「で、結局、商隊班と医療班が一緒になったのな」

「まあ、両方とも商隊に起因することだし」

クレアとアレクサンドラが話している。

「でも、医療技術については今すぐできることは少ないわね」

フローラは暇そうにしている。

それもそのはず、静たち4人はクソ寒いというのに外で稽古を始めたからだ。

静と巴の流儀でいう柔、いわゆる海外基準でいうところのレスリング的な練習、つまり取っ組み合いである。

取っ組み合いというのは、押し合いへし合いだ。

体格、体重、筋力、その他の技術、様々な要素があるが、結局の所「力」を如何に使うかである。

巴はどちらかというと剣や槍等の武器術より、柔の方に長けていた。

「せい!」

巴が技をかけると、静はころころと転がされてしまう。

「おー、ジュージュツ!」

ジャンヌが歓喜の声を上げる。

「じゃあ、私も一手お願いしますかね」

「望むところだ」

ジャンヌはみっちりとレスリングの練習をしたことがあるようで、実力伯仲といったところだ。

「うへぇ…」

それを見たヤンは引いている。

「ヤンさん、私とやろうか」

「えー、いや、今日はちょっと体調が優れないのでぇ」

ヤンはダラダラと汗を浮かべている。

「大丈夫、ゆるくやるから」

静は言った。

「てか、太極拳に興味があるんだ。教えてよ」

「あ、ハイ」

ヤンは少し安心したようである。


「マグダレナさんに現状の医療について調べてもらいましたが、思っていたほど前時代的ではないようですね」

フローラは紙に書かれた文字を読んでいる。

英語で書かれていた。

「中世ヨーロッパとかヒドイもんねぇ」

クレアが言う。

「それについては言及したくないです」

フローラは苦い顔。

「応急処置、薬草による治療という概念はあるようです」

「治癒魔法があるからね」

アレクサンドラが言った。

「治癒魔法が使える所へ運ぶまで簡単な処置をするってのが、この世界での手順なんじゃない?」

「薬草は?」

「治癒魔法が使えないとか、魔法で治しにくい病気に使うんじゃないのかな」

クレアが聞くと、アレクサンドラは答える。

「補助的なものでしょうかね」

フローラは考えている。

「問題は、フロストランドの人達が医療にあまり興味をもっていないという所ですね」

「そうすると教育が必要になるかも」

クレアは言った。

「ですね。教師、医師を養成しないと」

「ここの文字って難しいの?」

「いや、キリル文字とほとんど同じだよ」

クレアの質問にアレクサンドラが答える。

「若干、クセはあるけどね」

「じゃあ、ロシア人には分る訳か」

「まあね」

「身体の構造は違うのかな?」

「見た限りではそれほど違わないようですけど」

「その辺は医療の発達を待たないとね」

という感じで話をしている。

「当面は、

 教育と連動、学校を建てる。

 薬草と魔法について理解を深めてゆき、診療所を開設してゆく。

 こんな所かしら」

「だね」

「負傷した商隊の人達の治療を見せてもらいましたが、設備も揃っていないのでたいしたことは出来ませんでしたし」

フローラは申し訳なさそうにうなだれる。

「まあ、それでも傷の具合を見たり、包帯を巻いたり、やってたじゃない」

クレアが慰めるように言った。

「一歩ずつ進めてゆけばいいよ」

「そうね」



「武器ってどんなのがあるの?」

館に戻ってから、アレクサンドラが聞いた。

「うむ、槍、薙刀、斧、剣、刀、弓、石弓、盾などじゃな」

「鉄製の武器だよね」

「うむ、防具も一通り揃っとるぞ」

スネグーラチカは自慢げに言うが、

「銃はないのか」

アレクサンドラはちょっと落胆したようだった。

「なんじゃ、それは?」

「火薬を使って弾を飛ばす武器かな」

「発想が面白いのう、それ」

スネグーラチカはすごく興味を持っている様子だ。

「信長か、コイツは」

「種子島ね」

茶々を入れる静と巴。

「湿気に弱いのはダメかもねー」

アレクサンドラは言った。

「とまれ、当面は石弓を使うか」

「なんだ、自分用かよ」

クレアが呆れている。

「てことで、石弓が欲しいです、雪姫様」

「おお、ならば用意させよう」

アレクサンドラが頼むと、スネグーラチカは二つ返事である。

「じゃあ、私も槍と剣が欲しい」

「あ、私も」

静と巴は便乗。

「私は剣で」

ジャンヌも同じように便乗している。

「ヤンは要らぬのかえ?」

スネグーラチカが不思議そうに聞く。

「え、じゃ、じゃあ、槍で」

ヤンは、おずおずと言った。


「銃の開発は結構、遠い道のりだなぁ」

アレクサンドラが言うと、

「マッチロック式ではなくてフリントロック式がいいですね」

マグダレナが言った。

「飛び越えちゃうかー」

「ライフリングができればいいのですけど…」

「技術的に難しいなら滑空式だね」

「おいおい、さっぱり分らんぞ」

スネグーラチカは頬を膨らませる。

(ヲタ同士の会話だからなぁ)

静は思った。

「とりあえず鍛冶屋さんに作ってもらうといいんじゃないかな」

「うむ、そうじゃな」

スネグーラチカはうなずく。

「ところで、憲法とやらはどうじゃ?」

話題を変えてきた。

「草案はほぼできましたが、それを発表する前にお伝えすることがあります」

パトラが言った。

緊張の面持ちであった。

「なんじゃ?」

「憲法とはいわば国の方針です。国が守る決まりですね。と言うことは為政者が守るべきルールです」

「うむ、しかと肝に銘じようぞ」

スネグーラチカはパトラの言った事を即座に受け入れた。

「その言葉が聞けて嬉しいです」

パトラは、そこでやっと笑顔を見せた。

手元のメモを一つずつ読み上げる。


○フロストランド(以降、国と称する)は憲法に記される条項を守らねばならない。


○国は、健全で正常な国家を目指さねばならない。

○国は、近代的な国家を目指さなければならない。


○国は、フロストランド国民(以降、国民と称する)の健康を保障しなければならない。

○国は、国民の最低限の生活を保障しなければならない。

○国は、国民の安全を保障しなければならない。

○国は、国民に同国の法律を守らせなければならない。

○国は、国民に労働の義務を全うさせなければならない。

○国は、国家の安全に抵触しない限り、国民を国家運営に参加させなければならない。


○国は、国家運営上、安全保障上において必要な場合は、同国憲法を改正することができる。


「以上です」

パトラは完結に締めくくる。

「分りやすいな、これ」

クレアが感心していた。

「国の基本方針とも言えるからね、誰が見ても分る内容じゃないとダメなんだよ」

パトラは言った。

それはつまり、脳筋でも分るようにしたということだろう。

「うむ、これは良いな」

スネグーラチカは満足げにうなずいている。

「個々の法律は引き続き作成してゆきます」

「頼んだぞ」



「やっぱタービンが安定しない」

スカジはうなだれている。

「グルグル回すだけだから、蒸気を噴出させたらいいかと思ったけど、力が弱い」

「あー、あのヘロンが発明したやつ」

アレクサンドラが言った。

「蒸気タービンっていったっけ」

「ウチらの腕じゃ密閉型のタービンは作れない、どうしても蒸気が漏れるんだ。

 それから、ボイラーも改良してみたが、アレクサンドラが言うような構造はムリだ。

 だから、今のボイラーに横管を通したり、煙管を複数にしてみたり色々やってみたけど、どれも効率は上がらないんだよなー」

スカジはテーブルに突っ伏した。

「スカジさんが匙を投げるなんて珍しいね」

静は驚いている。

フロストランドでは、現代のように機械を使って部品を製作するということができない。

すべてが手作業なので極繊細な所は不可能と言って良い。

「うーん、どうしたもんかなぁ?」

クレアは考えるが良い案は出なかった。

「タービンは一旦置いといた方がいい」

アレクサンドラが言った。

何か考えていたようだが、アイディアが浮かんだのかもしれない。

「技術をかなり先取りすることになるけど、シリンダーを作ろう」

「シリンダー?」

「あー、おいしいよね、あれ」

「それはミ○ンダだ」

静とクレアはお約束をしてみせる。


アレクサンドラはすぐにペンを走らせて、図を描いた。

「円筒の中でこんな風にピストンが前後運動するんだよ」

「へー、面白そうだな、これ」

スカジは興味を持ったようだった。

「クランクに金属の棒がつながっていて動くんだけど、

 蒸気を流してピストンを右へ押し出した時は上部の蓋が左へ動いて円筒左側の蒸気が上に逃げて、ピストンが右側の蒸気圧で左へ押し戻される、

 ピストンが戻ったら、蓋が右へ動いて円筒右側の蒸気が抜けて、左側の蒸気圧でまた右側へ押して出してゆく。

 これの繰り返しだよ」

「うわ、ワケが分らないよ」

静は理解するのを諦めた。

「まず模型を作ろう」

「そうだな、やってみっか!」

アレクサンドラの説明を完全に理解したわけではないようだったが、スカジはうなずいた。


数日後にシリンダーができた。

これでやっと蒸気を動力に換える機構が誕生したのである。

「これでやっと発電機が…」

「大変だったよ…」

静とスカジが感慨深げにしていると、

「え?」

アレクサンドラは驚いた様子で二人を見る。

「まだ、磁石と銅線っていう課題が残ってるんですけど」

「はあー!?」

「まだ作るのぉっ!?」

二人はその場にひっくり返ってしまった。

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