第4話いたずら……1

僕ん家には80を越えるじいちゃんがいて、中学校の修学旅行前日に死んだ。孫の僕とひ孫のリエちゃんは、修学旅行ではなく、葬式に参加した。


閑話休題

小学生の頃、じいちゃんと、僕と、弟とでジュースを飲んでいた。

じいちゃんはジュースをグラス1杯飲むと焼酎を所望した。

僕は父の焼酎のお湯割り入れを担当していたので、両親に内緒でたまに焼酎を1杯だけ飲ませてあげていた。

じいちゃんは僕に、

「てんがら、てんがら」(お利口、お利口)と言って僕の頭を撫でてくれた。

弟がジュースを飲んでると、

「兄ちゃん、このコップ臭いよ!」

「あらっ?そう?」

コップ一杯飲み終えると、弟はコップを確認した。

『洗浄用』

「兄ちゃん、これなんて読むの?」

「なんだろうねぇ?」

「兄ちゃん、このコップじいちゃんの息の匂いがする」

「兄ちゃんには、分からない」

「まさかっっ!」

弟は台所に向かった。台所の食器棚のもの置き場にじいちゃんの入れ歯が乗っかっていた。

「兄ちゃん、これってじいちゃんのポリデントいれてあった、コップじゃない?」


「そうだよ。ポリデントって、キレイにする薬だから、大丈夫じゃない?」

「うぅっ、うぅっ」

「泣くなよ、入れ歯くらいで!」

「兄ちゃんの鬼!お父さんに言うからね」

「じゃ、これで好きなアイスクリームと、ビックリマンのヘッドあげるから」

弟は、100円と、シャーマンカーンのシールで機嫌を直した。

僕はコップにジュースを入れて飲んだ。

何か薬品くせ~。


『し、しまった!コップを間違えた。これ、入れ歯用のコップだ……!』


「美味しそうにアイスクリーム食べているところだけど、ビックリマンのシール返して!」

「やだよ!兄ちゃんが悪いんだから」

「兄ちゃんも入れ歯用のコップで飲んじゃったの!」

「僕には関係ない」

弟の意思は固い。

その後、入れ歯専用器をお母さんに頼んで、今日の話をした。

お母さんは笑っていた。

世の中、悪い事をしたら自分に返ってくると言うことが小学生ながらに理解した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る