第3話会社で
子供が産まれた時はとてもうれしかった。僕と嫁さんの血を引く自分の息子誕生に狂喜した。
出産後1週間くらい嫁さんは産婦人科のクリニックに入院した。
入院最終日の前夜、新米ママさんの旅立ちにフランス料理が出された。
料理を運ぶ看護師に、
「僕は、ミディアムで。後、赤ワインボトルで!」
「は?」
「だから、今日は最後に2人で祝いたいの!」
看護師は、当時30歳の僕を幼稚園児みたいに、
「ねぇ、パパさん。これは、新米ママさんの出産のお祝いの代わりなの。パパさんには出ないの。それに、病院がお酒出すわけないでしょ?」
「分かりました」
看護師は部屋を出ていった。
「ねぇパパ、あんたバカなの?」
と、美味しそうにステーキを食べている。
「ひ、一口だけ」
「だ~め、パパは家で冷凍庫の豚のこま切れ炒めて、ワンカップでも飲んでなさい。あした、9時半には迎えにきてね。じゃ」
翌日、我が家に息子を連れ帰った。
「パパでちゅよ~。……あっ、笑ったかも」
嫁さんはしばらくは、母乳を飲ませ、半分は粉ミルクを飲ませていた。人肌の熱になるまで、哺乳瓶を水道水でビンを冷やした。オムツ交換は殆んど僕。夜中、万が一の為に睡眠薬を飲むのを控えた。
だから、眠くて眠くて、昼間仕事をしていると、上司がハゲ散らかした頭まで真っ赤になり大変怒ってデスクに近づいてきた。
「羽弦、この書類まとめたヤツは誰だ!」
「はい、その書類はパパでちゅ」
チーン。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます