第二章

◇ 未来/2 ◇


 気づくのが遅かった。


 彼女の自宅には黒煙こくえんが立ち上り、激しく燃え上がっていた。


 火の後始末あとしまつが悪かったのか、あるいは放火だったのか、それはわからない。


 彼女が過ごした家、思い出、そして彼女自身。全てが燃えてしまった。


 確認するまでもなく、あとに残るのはずみだけだろう……。


 上手くいかなかった。救うことが出来なかった。


 帰り道のコンビニで新聞を買い、一人で自宅に帰るしかなかった。


■■ 2 ■■


「お邪魔します」


 ミライはイマイが住む二階建てのアパートを訪れた。


 間取りは1DKと一人で住むには少しだけ広く、二人で住むには少し狭い空間だった。


「どうぞ、自分の家だと思ってくつろいで貰って構わないから」


 イマイはミライに着せていたジャケットを片付けながら、口頭でミライに部屋の説明を簡単に行った。


「……色々と女物おんなものの服や物があるけれど……。私が来て良かったのかしら?」


 部屋にはスカートや女物の服だけではなく、小物、化粧品、美容用品、生理用品など、明らかに女性がこの部屋で生活している痕跡こんせきがある。


「あぁ……。少し前に彼女に逃げられちゃってね……。まぁ、なんだ……、気にしないでもらえるとありがたいかな……」


 イマイは触れられたく無いところを触られてしまい、苦笑にがわらいをしながらミライに語った。その表情はどこか悲しそうでもあった。


「あら……、ごめんなさいね……。でも、その彼女さんとは趣味が合うかもしれないわ、何となく私が好きなメーカーのものが多いもの」


「そうなんだ。じゃあ、ミライさんが良ければこの部屋にあるものは好きに使って貰って構わないよ」


「いいのかしら? 彼女さんに悪いんじゃない?」


「いいさ、どうせ彼女が戻ってくることはもうないだろうから」


 イマイはミライに背を向け、部屋の片付けをしながら会話をする。


「あら、そう。それじゃあ、ありがたく使わせてもらうわ」


◆ 過去/2 ◆


 今日から彼女と同棲どうせいをすることにした。


 1DKと二人で住むには少し狭いかもしれないが、今の自分に出せる家賃はこれが限界だったが、最低限の広さと安全は守られていると思っている。


 まさか彼女と同棲どうせいすることになるなんて、最初は考えてもいなかった。


 後ろ向きなことは捨てて、これからは二人が一緒に住んで、彼女を守り、前を向いて歩んでいこう。

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