清透な二面性

大出春江

清透な二面性

 私はきっと、生きたいのである。

 どこまでも広がる世界を、どこまで知っているのだろうか。

 私はきっと、知りたいのである。

 目の前に落ちる木の葉が、一体どのような名であるのかを。

 私はきっと、笑っていたいのである。

 ただ友人と酒を飲み、ただただ馬鹿馬鹿しく。

 私はきっと、歩きたいのである。

 大地の温みを感じ、自身の脈拍と肉体のあり様を感じ。

 私はきっと、正直でありたいのである。

 思う事を素直に伝え、やりたいことに正直で。

 私はきっと、愛したいのである。

 純粋な心をもってして、それを伝え、守り、繋ぎたい。

 私はきっと、勤勉でありたいのである。

 健康な精神と肉体を使い、勤勉であるがゆえに健康になりたい。


 私はきっと、怠惰でありたいのである。

 堕落しきった体と歪んだ精神を使い、なおも欲深く堕落したい。

 私はきっと、壊したいのである。

 汚れた心をもってして、壊し、裏切り、罪悪感さえも。

 私はきっと、嘘をついていたいのである。

 他人を惑わし嘲笑し、後悔の沼に浸かりたい。

 私はきっと、眠りたいのである。

 夜の空気に身体を冷やし、自身の惨めさを骨まで感じ。

 私はきっと、泣いていたいのである。

 ただ自身の現状に、自業自得に馬鹿馬鹿しく。

 私はきっと、籠りたいのである。

 目の前の塵一つにさえ怯えぬように、ただ頑丈な鍵を掛け。

 私はきっと、死にたいのである

 一寸先の光明に恐怖を覚え、広がる世界は知りたくもない。

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