第3話 【悲報】異常者扱いされる


 元お掃除ロボットがやってきた次の日。



 ピピピッ……ピピピッ……


「んん……朝か」


 スマホのアラームで目が覚める。


「ソファで寝たから体のあちこちが痛い……ん?」


 体の痛みに耐えながらソファから起き上がろうとすると、何かが体に乗っていて起き上がれない。


「……おい。何してんだ」


 案の定、翔の上にはメイが覆いかぶさって寝ていた。


「ん~?……あ!おはようございます!翔様!」


「おはよう。そしてどいてくれ」


「えぇ~そんな恥ずかしがらなくてもいいんですよ♪」


「シンプルに重い」


「酷いッ!」


 重いと言ったことにショックを受けたのか、すぐにどいてくれた。


「朝ごはん作るから、少し待っててくれ」


「分かりました!」


***


 その後、作った朝ご飯を2人で食べて、バイトへ行く準備を始める。


「翔様、私は今日何をしたらいいでしょうか?」


 リュックに荷物を入れている翔にメイは質問した。


「そうだな。家事をしてほしいと言っても、まだ覚えられてないだろうし……」


「あっ、そうだ」


 何かを思いついた翔は、メモ帳を取り出し、ペンで何かを書き始めた。



「これだ」


 書き終えたメモ帳をメイに渡す。


「これは?」


「そこには、今日やるべきことをリスト化してある。基本外でやるものだから、このアパートの周辺を知るきっかけにもなるだろ」


「なるほど!じゃあ早速、この【大家さんに挨拶する】をやっていこうと思います!」


 リストの1番上を指差しながらそう言った。

 本人は案外ワクワクしているようだ。


 本当は会わせたくないんだが、いつかは会ってしまうだろうし、とっとと挨拶させてしまおう。


「じゃあ頑張れよ。今日は一日バイトだから、家に着くのは夕方くらいだと思う」


「分かりました!翔様も頑張ってくださいね!」


「おう」


「ではいってらっしゃいませ♪」


 玄関で靴を履く翔にメイは笑顔でそう言った。


「いってきます」


 久しぶりにいってきますなんて言ったな。

 こういうのも案外悪くないな。


 こうしてメイに見送られ、俺はバイトに向かった。


***


コンコン


「失礼しまーす」


「はいはい。おや?可愛いお嬢さんが来たもんだね」


 メイは管理室にいる大家さんに挨拶に来ていた。


「織井翔様の部屋に入居することになりました。メイと言います」


 管理室に入った後、すぐに挨拶を済ませる。


「おお!君が織井君の」


「(普通の女の子。しかも別嬪さんじゃないか。ん?……様??)」


「改めて、私はこのアパートの大家です。よろしくね」


「はい!よろしくお願いします!」


「いきなりで悪いけど、彼とはどういう関係で?」


「(御年46歳。(自称)恋愛経験豊富な私は、やっぱりどういう関係か気になっちゃうんだよね~)」


「そ、そんな……私と翔様の関係なんて」


「(関係聞いたら急に慌てだしたし、初々しいなぁ)」


 もじもじするメイを見て、ニヤニヤしながら分析をする。


「私なんてただの従者なので、そういう目で見てくれてるかも分かりませんし」


「(主従関係しゅじゅうかんけい!?)」


「アプローチしてるんですけど、軽くあしらわれてしまいましたし……まあそれはそれでいいんですけど♡」


「(SMプレイ!?)」


「ま、まあ、仲がいいんならそれでいいんだが」


「もういいですか?まだまだリストのやるべきことがあるので……」


「あ、ああ。時間を取ってすまなかったね」


「いえいえ。では失礼します」


 そう言うと一礼し、管理室を出ていった。


「……」


「やっぱりヤバい人入居させちゃった?」


***


「おーい」


「え?」


「え?って。織井君ずっとぼーっとしてるけど、大丈夫?」


 翔は、小さな本屋のバイトをしていた。


「ああすいません店長。昨日色々あって」


 バイトに支障があったのか、心配してくれた店長にとりあえず謝る。


「ほほぉ……そろそろ織井君も20歳だもんね。悩みごとの1つや2つあるよな」


 腕を組み、昔を思い出すかのようにそう言った。


「なあ橋崎はしざきちゃん?」


 少し離れている所で本の整理をしている女性店員に話しかける。


「うるさいです。仕事に関係ないことで話しかけないでください」


 この眼鏡をかけている女性は橋崎さん。

 年齢は1つ上で、同じ大学の先輩。

 基本毒舌。


「ほら?橋崎ちゃんもそう言ってるだろ?」


「何言ってんだこのおっさん」


「本音が出てるぞ織井君」


 しまった。

 つい本音が出てしまった。


「まあいったん話を戻して……どういう悩みで困っているんだい?」


「……話しても引きませんか?」


「当たり前だ。こう見えてもよく相談を受けたりするんだ。何でも来い!」


 胸を張ってそう言った。


「実は……お掃除ロボットを買ったんですよ」


「うんうん」


「でも次の日に女になってたんですよ」


「うんう……ん?」


「しかも、同居することになって」


「……」


「今平行線が続いてるんですけど、今後どうすればいいんですかね?」


「よし!今日はもう帰って休むべきだ」


「シンプルにおかしくなったと思ってますよね?」


「うん」


「はぁ……そりゃそういう反応ですよね。俺も言われる立場だったらそういう反応します」


「じゃあ私が確かめに行きましょうか?」


「え?」


 いつの間にか背後に立っていた橋崎さんがそう言った。


「意外だね橋崎ちゃん。いつもみたいに辛辣なコメントをするかと」


「私のことなんだと思ってるんですか……とにかく、バイトが終わったら家行きますから」


「そんなに興味持っちゃって、どういう風の吹き回しだい?」


「別に。本当だったら本当で面白いですし、嘘だったら嘘で織井君がおかしいってことで面白いですし」


 俺玩具おもちゃみたいな扱いじゃん。


「ということで、先に終わっても待っていてください」


「わ、分かりました」


 淡々たんたんとことを進められて、断る暇もなかった。

 メイも橋崎さんも癖あるからなぁ。

 何も起きませんように!



続く



《キャラ紹介》

橋崎奏はしざきかなで

バイト、大学の先輩(大学3年生)。

黒髪ロングに眼鏡をかけている。

毒舌。


本屋の店長

ただの店長。

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昨日助けていただいたお掃除ロボットですが ダブルミックス(doublemix) @doublemix

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