第44話 対峙

賑やかで華やかな雰囲気の場所に、場違いな者が1人。皆が探していた本日の主役の手を引いて現れた。


その事実に、周りの反応は様々だ。


何者だ?

なぜこいつと共に現れた?

ドレスコードがなってないな。


基本的にはマイナスなものが多い。


それでも構わない。どうせ。この人たちとは今日限りだと思うし、俺は全く気にしない。


それよりも、


「…文乃さんはどこですか?」


はやいところ、この件について文乃さんと話をしたかった。


しかし、こちらを警戒しているのかひそひそと話をするだけで、中々質問に答えようとしない。


どうしたものかと思っていると


「代理のことか?彼女なら、一度皆の前に現れて娘を迎えに行ってきます。と言っていたぞ。」


偉い人なのだろうか。高貴な雰囲気を漂わせた男性がこちらに近寄り、答えてくれた。


「しかし、君は何者だ?お嬢さんとどんな関係なんだ?」


「ありがとうございます。


…僕が何者か、その答えは文乃さんが来た時にします。少し待っててください。」


とりあえず、文乃さんをここに連れてこなくては。

まぁ、ここに居さえすれば従者が報告して連れてきてくれると思うけど…。


しばらくこの微妙な空気の中で文乃さんが来るのを待つ。 


その間、招待された方たちは俺に待っといてくれ。と言われたことをしっかり守っているのか、こちらにそれ以上質問をする事もなく共に文乃さんを待ち続けた。


それから5分程経った頃だろうか。


カツカツと、ヒールの音を響かせながら文乃さんが登場した。それと同時文乃さんは頭を下げて


「……まずは皆様、この会が遅れてしまったこと、深くお詫び致します。


娘が申し訳ありませんでした。」


まずは謝罪をした。


そして俺は、文乃さんが頭を上げるのを待ってから


「文乃さん。なぜ僕たちがここにいるか分かりますか。」


「その前に、ここだと少しアレだから場所を変え━━」


「━━いえ、社長代理。私たちはここでかまいませんぞ。移動する時間も惜しい。

しかも、この子達は私たちにも聞いて欲しいようだ。」


…周りの人々もそれがわからなかったからこそ、

文乃さんの次の言葉に耳を澄ませる。


「……単純に観念した……と言うわけではないのでしょう?もしそうならありがたいのだけれどね。」


なんだか薄々わかっていそうだな。

まぁいい。


とりあえず、周囲に人がいる状態は作れた。

あとは文香の話をするだけ━━━


「文乃さん。あなたは文香を連れ戻して何がしたいんですか。」


「それはもちろん。私たちの家を継ぐため、

教育するに決まってるじゃない。


むしろ今まで自由にさせてきたことを感謝して欲しいわね。」


まぁこれは想定内だ。大概の理由は跡取りとかそんなところだろう。


「ちなみに、その教育とは具体的にどのようなことを考えてますか?」


「それをあなたに教える必要はないと思うのだけど?」


「えぇ。そうですね。


しかし、この方たちは違うでしょう。

文香が家を継ぐとなれば、サポートする立場の人にも知る権利はあるはずでは?」


「……。」


すると、俺の言葉を肯定するようにこの場の皆がうんうんとうなづいた。


「……そうね。

…けれどやはり教えることはできない。企業秘密だから。」


ふむ。そう言われてしまえば何も言うことはできない。

だが正直いらない情報でもあったがな。


これ以上時間を使うのもアレかと思った俺は

一気に本来の目的の質問をする。


「なら、文香の幼少期のような教育はしないんですか?」


「……。」



すると、文乃さんの様子が変わった。


「あなた。何を言っているの?」


おっと?思ったよりも効いている?


心なしか焦っているように見えなくもない。

周りもざわつき始める。


ここは攻めるしかない!



「……ですから、あなたが昔、文香に強要してきたことですよ。」






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