第34話 最後の問題

さぁ、どうしようか。


文香を助けるためには、多くの警備を掻い潜り、いち早く文香の居場所を突き止め、連れ帰った後のことを考えなければならない。


しかし、先ほど結梨が手を貸してあげると言ってくれたおかげで、選択の幅が広がった。


そこで俺は、結梨を経由して両親にしばらくの間文香を匿ってくれないかと聞いてもらうことにした。


別に自分でもできないことはないが、一からその理由を説明すると時間がかかってしまう。


それなら、事情を知ってる結梨に言ってもらった方が、こちらに時間を多く割けるのだ。



そして文香の居場所のことだが、どうやら近いうちにパーティーが行われるらしい、、


確かに、文香は言ってたよな。文乃さんはパーティーを開くことが多いと。


……そして、あの日からそう日も経たずに開催が決定するということは、文香もそれに出席するだろう。言ってしまえば文香の婚活パーティーみたいなもんだから。


しかし、文乃さんもその時を俺たちが狙っていることは百も承知だと思う。


それでも、パーティーを開催するということは文香を連れて行かれない自信があるのだろう。


それだけが、ありがたかった。


残りは警備だが、正直これは難しい。


きっといつもよりも頑丈で強固な警備網が

しかれ、近づくことすらままならないかもしれない。しかも、招待制だろうから真正面から突破できるはずもない。


「・・・どうにかしてパーティーに潜り込めないだろうか、、、。」


思わずひとりごとを溢してしまう。


それほどまでに、解決策が見つからない。


〇〇〇〇〇〇〇〇


結局その日は何も思いつかず、だらだらと時間を消費してしまった。


まぁそれも仕方のないことかもしれない。


実際、人生の中でパーティーに乱入するなんて普通は体験しないことだろう。


ましてや、その主役を連れて行こうとしているのだ。


そう簡単に思いつくはずもなかった。


「うーーん……。マジでどうしよう…。」


布団に横になりつつ、考える。


当たり前だが、脳みそを使っているので眠れるわけもない。目はギンギンしていた。


「・・・寝る前だけど、なんか甘いものでも飲むか。」


結局、このままダラダラと過ごしていても効率が悪くなるかなと、俺はカフェオーレを飲んだ。


「・・・カフェか。


・・・そういや、あのおじさまいるかな。」


カフェオーレのパッケージを見て、そう思った。


あの時のカフェに、あの時の時間に行けばもしかしたらあの老紳士に出会えるかもしれない。


あの方は結構詳しい話を聞かせてくれたからな。


なにかいい情報が手に入るかもしれない。


俺はそう考えた瞬間、一気にカフェオーレを飲み干し、布団に再度潜った。


何か手掛かりが掴めるかもしれない。

何かヒントをくれるかもしれない。


今度は早く眠りたくなった。




━━━次の日、俺はとあるカフェに来ていた。


前と同じ、カフェラテを飲みながらパソコンを開いて、桜ヶ崎について調べる。


彼は現れるだろうか。


そんなことはわからないが、何故か俺には会える予感がしていた。


『また、会えることを祈っているよ。』


別れ際のこの言葉の言外に、


また、ここで会おう。


という意味を感じたからだ。


あくまで感じただけで、本当に来てくれるかは疑問だけどね。



しかし、俺の予感はしっかりと当たってくれたようだ。


昼が過ぎた頃、鈴の音と共に扉が開き、現れたのは

やはり立つ姿の雰囲気が素晴らしい、40半ばに見える男性だった。


「・・・おや?君は。」


男性は俺の姿を見つけると、嬉しそうな表情で


「…また会えて嬉しいよ。


あの日からもう来ないのかと思ったからね。」


「あっ・・・。ごめんなさい。」


「はっはっは!


いや、いいんだ。


私もここで会おうとは言っていないからね。」


男性は笑顔を見せ、俺の向かいに座った。


「・・・さて、君が久々にここへ足を運んだ理由は何かな?


きっと私に用があったのだろう?」


そしてホットコーヒーを頼みつつ、そう尋ねてきた。





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