閑話 ありがとうも伝えられない。


「嫌っ!もう辞めて!!


・・・・・分かったからっ!着いて行くから!」


私の見つめる前で、地面に倒され、大きな男に

上から押さえつけられている宗則くん。


男は宗則くんの後頭部に肘を押し付け、苦しそうな声を出させていた。


ちぃちゃんも後ろから羽交締めにされ、暴れてはいるが男の力には敵わないようだった。


━━━━私のせいで、、2人を危険な目に合わせている。


正直、母がここまでするとは思っていなかった。


・・・こんな、他人を酷い目に遭わせるなんて、本当に酷い親だと思った。


だから、もういい。  


このまま私のわがままで拒み続ければ、宗則くんが最悪なことになるかもしれない。


それくらいなら、私が諦めた方が━━━


「遅い。


どうせこうなるのだから、もっと早く着いてくると言いなさい。」


「・・・。」


「・・・まぁ、いいわ。


解放してあげなさい。」


母がそう指示をすると男たちは私を除いた2人を解放した。


・・・でも、宗則くんは動かない。


気絶してしまったようだ。


「さぁ、行くわよ。

文香が逃げないようにしっかりガードするように。」


そんなことを気にする様子もなく、

また指示すると共に3人の男が私を取り囲む。圧がすごくて、ちょっと怖い。


「文香っ!」


連れて行かれる私を、ちぃちゃんがすごい顔で見てる。


・・・何もできなくてごめんね。みたいな顔をしないでよ。


ちぃちゃんは私をここまで育ててくれた。

ケーキのおいしさを教えてくれた。


こっちこそ、ごめんなさいだよ。


最後まで迷惑かけて。


でも安心して。私、まだ諦めてないから。


まだ、ちぃちゃんにありがとうって伝えてない。


だから、待ってて。


宗則くんも、私とお付き合いしてくれてありがとう。短い期間だったけど、幸せだった。


・・・私はあなたを忘れないから。


バタンっ。


黒塗りの車に押し込まれ、私はどこかへ連れて行かれる。

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