第26話 それぞれの思い。


宗則くんはこの夕焼けを見て、何を思っているだろう。


いつもはすぐに読み取れる感情も、オレンジ色に染まるその横顔からは読み取ることができない。


だったらせめて・・・

少しでも、思い出になってくれてるといいな。


〇〇〇〇〇〇〇〇


日がすっかり落ちきり、真っ暗になった廃病院を後にする。


文香は急用ができたと迎えを呼び、千紗さんがついでと俺を家まで送ってくれた。


「・・・今日はありがとう。スイーツ、めっちゃ美味しかったし、いい景色も見せてもらえた。あと、すごく楽しかった。」


「うん。私もあそこのラーメン屋通うようになるかも!それぐらい美味しかった!

それと、めちゃくちゃ楽しかった!ありがとう!」


いつものように、楽しく笑う文香。

その表情を見て、俺も嬉しくなった。


「それじゃあ・・。


千紗さんも、送って下さってありがとうございました。」


「うんうん。いいんだよ!こちらこそありがとうねー。」


「じゃあね。宗則くん。バイバイ。」


俺ももう一度、その言葉にバイバイと返す。


・・・。


行ってしまったか・・・。


文香は今日を楽しんでくれただろうか。

別れの時の楽しかった。という言葉を疑うつもりはない。


しかし、どうしても俺の心に残ってしまう。



━━━━別れ際、顔を曇らせた文香のことが。






メッセージが来たのは、宗則くんと一緒に

私の行きつけの、スイーツ専門店から出た後だ。


私はそれを見て、どうしても宗則くんをあの場所に連れて行きたくなった。


そのメッセージの内容は


『約束、忘れてないわよね。


後2日、せいぜい楽しみなさい。』


・・・・・。


いつまでも、私の心を蝕む悪魔。


以前までは干渉することもなかったのに。

私には興味ないと切り捨てたくせに。


今になって、私を連れ戻そうとしているみたいだ。

その原因はわからないけど、もう私は母の元に戻る気はない。


もう二度と、あんな酷い生活はしたくない。


だから、私は戦わないといけない。


私を産んだ母と。


何よりも、幸せな人生を歩むために。






━━━今日は楽しかったな。文香がラーメンを好きになったと言ってくれて嬉しかったし、

文香の好きなお店も知ることができた。


幼い文香の思い出の場所にも行けたし、恩人の話も聞けた。


しかし、最後の文香の表情。あれはきっと文乃さんが関係してるだろう。


そして、俺は文香を助けると約束した。


だから、何かあればすぐにでも文香のために飛んでいく覚悟はできている。



・・・いつか、一緒に幸せな日々を過ごせるように。

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