第22話 君のオススメのお店が
あの後は、普通にボウリングを楽しみそろそろいい時間ということで、ボウリング場を出た。
しかし、てっきり驕りとはこの中での食べ物かと思っていたが、どうやら違ったようだ。
「楽しかった!ボウリング!」
文香も初めてのボウリングをかなり楽しんでくれたようで、ずっとニコニコと微笑んでいる。
もちろん、俺も楽しかった。
「けど、絶対明日筋肉痛なるよ笑
文香、最後らへん全然上手くいってなかったし。」
「あ、あれは!仕方ないじゃん!だって力が入んなかったんだもん!」
そう、文香は1番最後のゲーム、スコアはなんと24だったのだ。お察しの通り、Gの文字が何度も何度も表示され、俺は可笑しくて笑ってしまったほどだ。
「でもまぁ、初めてにしては上手だったんじゃない?俺なんて、70くらいがやっとだったもん。」
「えー?そうかな。へへ。嬉しい。」
褒めたらすぐにこんな感じになるんだから。
かわいいね。
「ところで、文香のオススメのお店って近く?」
「あー。・・・多分10分くらいで着くかな。」
「うん。オッケ。」
体も動かして、ちょうど甘いものを口にしたくなってきた。
なるほど、だからボウリング場の近くには様々な飲食店が建っているのか。
一つ勉強になったところで文香が尋ねてくる。
「宗則くんってよくウチでガトーショコラを頼むでしょ?やっぱり宗則くんってチョコ系が好きだったりするの?」
「うーん。そうだな。好き。
・・でも、ずっと昔からチョコ系のケーキばっかり食べてたから、それもあると思う。」
「なるほど・・。だから・・・。」
「ん?なんかあったのか?」
「え?いや、こっちの話!」
ハハー。と手を振る文香だったが、まぁいいか。
「じゃあ結梨ちゃんもその影響を受けたんだね。」
「へぇ。よくわかったな。結梨もチョコ系が好きだって。」
「まぁね。」
お互いの食の好みについて話していると、なんと前方に冬真と思われる人物が女性と歩いているのを目にする。
文香もそれを見たようで
「あ、冬真くんだ。」
「お、知ってるの?冬真のこと。」
どこかで出会っていたのだろうか。
「あー。うん。一応ね。」
? なんか、歯切れが悪い気が・・・
気のせいか?
「それにしても、あいついつの間にあんな彼女を・・」
まだ彼女かもわからないし、俺が言うのもアレだけどね。
おめでとう!冬真。
「あはは。この感じだと、同じ店に入るかもね。」
・・・。
マジで?
2人が向かう先には、おしゃれな外見のいかにもスイーツ専門店みたいな建物があった。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「どうする?俺たちもはいる?」
先にそのお店に入った冬真たちを見て、尋ねてみた。
「そうだね、、。でも、きっと2人で楽しみたいと思ってるかもしれないし。」
「なら、できるだけ気づかれないように離れたところに座る?」
「そうだね。」
結果、俺たちも入店することにした。
「いらっしゃいませぇ〜!」
可愛らしい、高い声が俺たちを迎えてくれる。
「ご自由にお座りくださいね〜」
と、店員さんが席のある場所を教えてくれる。
「すごい、、、。女の子の店って感じ、、。」
明るい色が基調とされた店内は、俺には理解が追いつかないほどに、映え〜とした雰囲気が漂っていた。
「ふふ。そんなに緊張しないでいいのに。」
「でも、俺浮いてたりしない?大丈夫?」
「大丈夫だよ!違和感ない。」
文香がいると忘れがちだが、俺は元々陰キャな性格なのだ。いつまでも、こういう場所には苦手意識がある・・・。
そんな俺を見て、何かを思ったのか文香がまじまじと俺を見つめながら
「宗則くんって本当にこういうとこ、苦手なんだね。」
と何か意味ありげに呟いた。
笑ってくれているから悪い意味ではないと思うが。
「慣れるように、頑張ります・・・。」
俺は情けない声を出しながら、そう答えるしかなかった。
「うん。頑張ってね。
じゃあ、何食べよっか。」
そっか、メインは食べることだよな。
当たり前だろ。俺。
やばい、テンパってる。
「そ、そりゃあ、文香のオススメだろう。俺の時もオススメ食べてくれたし。」
「そっか。それもそうだね。じゃあ・・・。」
そして、文香はメニューをひとしきり見た後、
近くに立つ店員さんにすいませーん。と声をかけた。
なんかよく分からない、名前の長い物を注文しており、その姿にスッゲェ慣れててかっこいいと思った。
「かしこまりました〜。お持ちするまでお待ちくださいね〜。」
と店員さんが去るのを見届け、俺は素直な感想を言う。
「やっぱり慣れててすごいな。びっくり。」
しかし、文香はそんなことないよと、
「それいったら、宗則くんだってラーメン屋の時すごかったよ?いつもの。で通じるなんて。
顔を覚えてもらえてるってことだもん。すごいよ。」
逆に褒めてくれた。
文香はこっちが褒めると、いっつも俺を上げてくれる。
嬉しい。好き。
「いやー、でも俺は長い名前のやつ注文する時噛んじゃいそうだもん。」
「あはは。そうかもね。
私も最初は噛んでた笑」
待ってる間は、普通に写真を見せあったり、文香が記念に。と店内の壁紙を背景に写真を撮ってくれたりした。
すると、俺たちのところへ、めちゃくちゃ美味しそうで、めちゃくちゃオシャレなケーキが運ばれてきた。
チョコを基調としたミニサイズのショコラケーキに、もう一回り小さなケーキが乗っている。
しかも、その周りには花を形取った何かが
よりそのケーキの見た目を華やかにしていた。
さらに、後から泡で猫の形を作ったカフェラテも運ばれてきて、一気にテーブルの上が華やかになった。
「すっっっげぇ、、、。」
こんなおしゃれな物初めて見た。
「うふふ。・・・すごいでしょ?」
感嘆の声を漏らす俺を見ながら、文香は自分のことのように誇った。
「ウチじゃこんなにおしゃれなケーキは出せないからさ。
あくまでウチはシンプルで美味しいをモットーにしてるし。」
「なるほどな。でも、そのモットーをちゃんと守ってるからすごいよ。ほんとに。」
「うん。ありがと。
でもね、実はここのお店ってちぃちゃんのお弟子さんが建てた店なんだよ?」
「え?!そうだったの?」
驚いた。千紗さんって元々お弟子さんがいたんだ。いや、まぁ文香も一応弟子ということにはなるのだけど。
「すごいよね。ちゃんと美味しいし、オシャレだし。私も勉強がてらここに来るんだ。」
「なるほど・・・。なんかドラマがあるな。」
「うん。
それじゃあ、食べよっかと言いたいところだけど、あとちょっと待ってね。」
と文香は近くで待機していた店員さんにスマホを渡し、ケーキの前でポーズを取った。
あ、いたんすね。
とそれを眺めていると
「ほら、宗則くんも。」
文香がポーズを取ったまま、
お前も早くポーズ取れ(脳内変換)と目で合図してきた。
俺もそれに従い、ぎこちなくピースをしてシャッターが押されるのを待つ。
その時、不意に近づいたことで文香から、とてもいい匂いがした。
(あ、いい匂い。)
パシャっ!
あ。
「・・・・あー。
ちょっとお兄さんのお顔・・・。」
と、店員さんが気まずそうな声を出す。
それを聞いた文香が写真を確認すると
「ブフッ!
む、宗則くんっ!か、顔っ!」
そして、店員さんが俺に見せてくれた写真には
いつものように可愛い笑顔の文香と、その横で
まるでくしゃみを我慢しているかのように
目を閉じたまま口を半開きにし、昇天しそうになってる男が写っていた。
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