第21.5 勝負好きな君が
残されたピンは左の4.7.8。
比較的、スペアが取りやすい位置にある。
文香はしっかりと姿勢意識しながら、球を投げた。
真っ直ぐ進んだ球は4番と8番の真ん中に当たり、倒れたピンによって7番のピンも倒れた。
上の画面に大きく『spare‼︎』と表示される。
「見てみて!スペアだって!やったやった!」
画面を指差しながらぴょんぴょん飛び跳ねる。
「すごいじゃん!ちょっと直しただけで十分上手くなってる。」
他の人はどうかわからないが、少なくとも俺は初めてのボウリングで、しかも1ゲームの中でスペアが出るのはすごいと思う。
俺なんて1ゲーム目はガターばっかりだったからな。
「ほんと?私上手?嬉しいなぁ。」
ニコニコと、心の底から楽しんでいる様子で
俺もいつもより楽しくなってきた。
「よっしゃ。じゃ、俺はターキー狙うわ。」
目指すは3連続ストライク。文香がいる今、俺は絶好調だ。
そして、俺は球をど真ん中に向けて
投げ出した、、!!
・・・結果は、力み過ぎた影響で大きく左へそれ、ガターになってしまった。
「・・・。」
毎回、やるぞ!と思った時に限って失敗する。
そのたびに、めちゃくちゃ萎えるんだ。
「宗則くんでもガターになるんだね。」
クソっ!文香にいいとこ見せれなかった!!
しかし、逆にここでスペアが取れれば実質
ストライク(?)。やるしかない。
そして俺は敢えてカーブをかけ、スペアを狙った。
右の溝ギリギリをボールが進み、中間らへんで左に曲がる。
それを見た文香はえ、すごっ!と驚いた声をあげていたが、俺はスペアが取りたいんだ。
しかし、そんな願いも虚しくボールはそのままピンに当たる前に左の方の溝に入り、結局はガターとなった。
「あはははは!めっちゃ曲がってww逆側にw」
それを見た文香はツボにハマったのか、しばらく爆笑を続けていた。
・・・まぁ、ウケが取れたなら良かったのかもな。
その後は2人とも可もなく不可もなくといった感じで、1ゲームを終わらせた。
結果は俺が132
文香が81だった。
意外とやりますね、、。
「ねぇねぇ。せっかくだから奢りをかけて勝負しない?」
すると、文香がそんな提案をしてくる。
「ん?別に構わないけど、ほんとにいいのか?」
この1ゲームで結構上手くなった文香とはいえ、正直まだ俺のスコアを越すことは出来なさそうだが。
「もちろん。ハンデはつけさせてもらうよ?」
ほう。面白いじゃないか。
「なるほど。それならいいだろう。
して、一体どんくらいハンデつけようか。」
「じゃあね〜。スコアに15点差つけて、さらに宗則くんは2球あるうち一球はカーブを投げること!」
ふむ。たとえば初めにストレートを投げて
もし、6、9、10番のピンが残った場合、必ずカーブでスペアを狙わないといけない。ということか。
本当にそんな状況になったら右回転のカーブを投げないといけなくなるな。
別に投げれなくはないけど、コントロールは残念ながらできない。
結構いいハンデかもしれない。
「うし。じゃあそれでいくか。
負けないからな〜!」
「ふふん。私だって。負けないからね!」
こうして、2人の奢りをかけた一大勝負が始まる・・・・・!
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
先行は俺。まず、一投目はストレートで投げる。
球はピンの4番、7番の間に当たり1番、9番を残しあとは全て倒れた。
それにしても、中々難しいのが残ってしまった。この2つの離れたピンをカーブで倒さなければスペアを取ることはできない。
できるとしても、それはプロ並みの実力がないとキツイだろうな。
やるだけやってみたが、結局1番のピンしか倒すことができず、スペアにはならなかった。
「よーし。次は私ね。」
文香はすっかり様になった姿勢で球を投げ出す。
それは並んだピンの右側に当たり、7番のみを残して倒れた。
や、やるやんけ。
しかし、残ったピンは1番左のピン。
これに当たるのが思ったよりも難しい。
文香も狙って投げたのだろうが惜しくも当たらず、結果は9ピンだった。
しかし、同じ9ピンでも現時点では俺が負けている。ここからストライクやスペアをどんどん取らないと負けてしまう。
その後も俺はスペアにはなんとかできるが、ストライクを中々取ることができず、焦っていた。
対する文香はスペアこそ取れないものの、基本的に7ピン以上倒していたため、思ったよりもそこまで点数の差は縮まらなかった。
そして、9フレーム目が終わった今、
俺のスコアが108。
文香が74+30になっていた。
いい勝負過ぎる。
そして、運命の第10フレーム。
俺は一旦集中し、狙ったところへ球を投げ出せるようにイメージする。
一投目。俺が放った球はど真ん中に直撃した。
が、あまりの球の勢いに、ピンの1〜6と、8番をを倒し、両端7、9が残ってしまった。
スプリットと呼ばれるものだ。
ちなみに、俺は今までで一度もスプリットの経験がない。
正直、もうスペアは取れない気がする。しかし、ここで取るのが主人公だ。
対して差がない今、スペアを取り、その後ストライクを出せば大きく点数を伸ばせるだろう。
ここでやらなきゃ男じゃない。
俺はやる!
そして俺は、左の7番に勢いをつけたカーブボールを当てて、その倒れたピンで9番を倒す。という作戦を実行した。
レーンの右側に立ち、できるだけギリギリで7番に当てる。イメージ、、イメージ。
・・・完璧だ。よし、いくぞ!!
俺は、「行っておいで」と言いながら、球を送り出した━━━
━━画面に表示されたのは、G。
結果、俺のスコアは116。
なんとも言えない。
・・・・・っ!!
何が 行っておいで。だ!恥ずかしくて文香の顔が見れない!
俺が放った球は、キレイに弧を描き、7番と9番のピンの間を華麗にすり抜けていった。
どうやら俺は主人公でもなんでもなかったらしい。神様マジ恨むぞ。
まぁ?文香がスペア以上出さなければ?俺の勝ちだから。
男らしくない?そんなの関係ねえ。これは勝負なんだ。
「よし!私の番!
見ててね。逆転して見せるから、、、!」
文香は逆転のチャンスで燃えているようだ。
「スペア以上、、、。スペア以上、、」
詠唱するように自分に言い聞かせているその姿は、勝ちへの執念を感じられる。どんだけ奢ってもらいたいねん。
しばらく集中した様子で、ピンを見る文香。
そして
「・・!とりゃぁ!」
いよいよ文香の手から球が投げ出された。
その球は左側のピンを3本倒した。
だが、まだ安心できない。残りのピンを全て倒されたら負けが確定する。
頼む。俺は負けず嫌いなんだよ。神様。勝たせて!
「行きますっ!」
そして、文香が球を投げた、、!
・・・それは、ガターの方へ一直線に進んでいく。
勝った!危ねぇ!
と思ったのも束の間、なんとその球は急に軌道を変え、残りのピンを全て倒してしまった。
嘘、だろ?・・・今のは、、カーブ?
しかし、何故。俺はまだカーブボールなんて教えてないはず、、。
すると文香が誇ったようにこちらにVサインをして・・・
「見様見真似でやってみた!」
満面の笑みでそう言い放った。
俺の、、、、完敗です、、、、。
最終スコア
宗則 116
文香 94+30(最後でストライクを出した為)
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