第13話 俺を想う妹が

家族で食卓を囲みながら談笑している。


最近の話、大学生活、そして、彼女のこと。親からの質問攻めに答える。


「どっちから告白したの?」


「付き合ってどのくらい?」


「可愛い?」


等々、ほとんど文香のことばかりだったが。


「今の宗則から見て、文香ちゃんのどこが好きなの?」


「文香のどこが好き、、か。・・・・一番は、笑顔、かな。なんだか文香の笑顔を見ると、癒されるというかこっちまで幸せな気持ちになるんだ。もちろん他のところも好きだけどな。」


俺は本心を伝えた。もうすでに結梨には知られているし、今更恥ずかしいこともない。


「一緒だね。」


「そうね。一緒。」


そう言って結梨と母さんが何か話している。2人とも俺と同じで笑顔が好き。ということなのだろうか。


「その子は大丈夫なのか?男なら、何かあったら助けてあげるんだぞ。」


父さんに言われてより一層、文香を守りたいと思う気持ちが強くなった。男としての先輩の父さん。かっこいいです。


「うふふ。お父さんったら。昔私が不良に絡まれてるときにビクビクしてたのが思い出せるわ〜。」


「ちょ、ちょっと!それは子供達の前では言わないでくれとあれほど・・・!!」


「えー!お父さん、兄さんに偉そうなこと言ってる割に自分はびびってたんじゃーん!!」


「くっ!・・・お父さんにだって怖いものはあるんだ、、。だから、父さんみたいになるな。と言いたいな。」


「まぁまぁ、そんなこと言わないの!それでもお父さん、ビクビクしてるのに私と不良の間にずっっっと立ち塞がってくれてね。あ、この人は自分よりも他人を大切にできるんだなって思ったの。」


母さんはその時を思い出すように頬を薄く赤らめた。


「だからね?お父さんの言ってることは大事よ。

私がお父さんに惹かれたように、宗則もそんな勇気を持ちなさい。自分の身を犠牲にしろとは言わないから。

文香ちゃんをちゃんと守ってあげてね。」


なんだかシリアスな空気になった気もするが、両親からありがたいアドバイスをもらい、やる気が出てきた。


「あぁ。約束するよ。文香を絶対に守ってみせるって。どんなことからもね。」


そういうと、両親ともうんうんと頷いてくれた。


しかし、文香を守ることを強く意識させられた気がして、なんだか近いうちに文香に何か起きるのではないかと嫌な予感がしていた。




食事も終わり、各々が完食した食器を洗い場へ運ぶ。


そしてもう一度リビングへ戻ると結梨がちょいちょいと部屋から手招きをしていた。


誘われるままに結梨の部屋へと入ると、


「兄さん。もっかい一緒に遊ぼ!」


とゲーム機を片手にVサインをしていた。


ふふふ。愛い奴め。もう一度ボコボコにしてくれるわ。


「まだまだ勝負は終わってないかんね!!」


「ふっ!もう負けんよ。」


こうして俺と結梨の第二ラウンドが始まった━━━。



あれから何戦しただろうか。数えることをやめるくらい、戦ったのかもしれない。その勝負が終わりを告げたのは明らかに結梨が船を漕ぎ始めたからだった。


・・・さすがに眠いよな。明らかにプレイングにも影響が出てきている。今日はもう終わりだな。


「ほら、結梨。もう眠いんだろ?そろそろ終わりにしよう。」


俺がそう言うと


「はっ、、!・・・全然眠たくない!勝負する!」


「よだれ垂らした顔でそう言われても、、、。もう夜も遅いし、夜更かしはお肌に悪いんじゃないか?」


「関係ない!今日一日くらいなら大丈夫だし!やろうよ。」


結梨は寝ることを譲ろうとしない。


正直、なんとなく理由はわかるんだけどね。これを俺が指摘するのは良くない。ここは説得するしかないな。


「てかそろそろ寝ないと母さんが鬼になるぞ?それでもいいのか?」


「・・・!くっ!それは、、、。」


「な?また今度遊ぼうぜ。」


なんとか説得できたか?


すると結梨は拗ねたように


「・・・今度って、いつ?」


「え、、、?」


「兄さん。明日帰るんでしょ?そしたら、今日みたいに遊べないじゃん。兄さんの家にゲーム機もないし。


ねぇ、、。今度っていつなの?」


・・・。


やっぱり寂しい思いをさせてしまっていたのか、、、。


今までは強がりか、全くそんな素振りは見せなかったが睡魔との戦いで、弱いところが出てきているのだろう。


俺は結梨をおぶり、結梨の部屋へと歩いて行く。


「大丈夫だよ。きっとすぐさ。寂しいんだったら、毎週でも帰ってきてやる?今日久々に帰ってきて俺も家が落ち着くことに気付いたからな。」


部屋へと入り、ゆっくりとベッドへ下ろす。


「少しお金はかかるけど、お前に会えるなら安いもんだしな。・・・明日は目一杯遊ぼう。今までの間隔を埋めるように。そのためには早く寝ないとな。」


結梨の頭を撫でる。それに結梨は気持ちよさそうに目を細め、やがて静かに寝息をたて始めた。


「・・・おやすみ。」


この歳になって、妹とこのようなやり取りをすることは恥ずかしいことかもしれない。だが、幾つになっても幼い頃から一緒に育ってきたんだ。たまにはいいだろう。


さて、明日は結梨と何して遊ぼう。


可愛い可愛い妹のために、俺も早く寝るとしよう。



〇〇〇〇〇〇〇〇


短いですが、どうかお読みいただきありがとうございます。


頻度をもう少し上げられるよう、頑張ります。

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