第14.0話 心配してくれる妹が
何故だろうか。家族が泣いている。俺の視界には、涙で顔を濡らしこちらを覗き込む結梨の姿があった。
ふと脱力したように顔を傾けると、両手で顔を覆っている母さんも見えたし、その母さんの肩を抱きながらこちらを見ている父さんもいる。
痛みはないのに、体が動かない。泣かないでくれ。そんな言葉も出やしない。溢れる涙を拭うこともできない。
そんな俺の前に何者かが現れ、
「━━━━。」
次の瞬間、俺は目が覚めた。
ひどく息切れをしている。またこんな夢を見てしまった。どうして急にこんな夢を見るのだろう。
さらにたちが悪いのが、妙にリアルな夢なのだ。
まるで本当に、その状況を体験しているかのような━━。
「兄さん、、、?大丈夫・・・?なんかうなされてたみたいだけど。」
少し空いた扉の向こうから、心配そうな顔の結梨がこちらを見ている。
「あぁ、大丈夫だ。もしかして、起こしちゃったか?ごめんな。」
「ううん。私もついさっき起きて、兄さんを起こしに来たら苦しそうな顔してたから・・・。」
そう言いながら部屋へ入ってくる結梨の手には、おしぼりのような物とスポーツ飲料があった。
「私が昨日、夜遅くまで遊んでもらったせいで体調崩したのかと思って、、、。」
「いやいや、全然そんなことないぞ。俺も楽しかったしな。ちょっと怖い夢を見ただけなんだ。」
あまりにも結梨が沈んだ表情をするものだから、頭を撫でながら本当のことを伝えた。
「そうだったの?怖い夢ってどんなの?」
・・・困ったな。
めっちゃ結梨が泣いてた。と言っていいものだろうか。
でも聞かれたからには答えないといけないような。
うーん。と悩んでいると「言えないならいいの。」と俺の手を握り
「でも、いくら私の兄だからって、強がって自分の中に留めないでね。私ももういい年になったんだから、たまには兄さんから相談をしてもらいたい。」
そう言ってくれた結梨は先程の沈んだ表情から一転、強く真剣な目で俺を見つめていた。
・・・頼もしくなっちゃって。
「わかった。また俺が悩んだ時は、すぐに有利にに相談するよ。頼りにさせてもらうわ。」
と照れ臭さを隠すように、今一度結梨の頭を撫でた。
両親は共働きで、朝は家にいない。それでも朝ご飯を作ってくれている母には感謝しかない。
2人で朝食を済ませ、今日は何するかを話し合った。
すると結梨はしばらく悩んだ後に
「やっぱり、『あそこ』で遊びたいな。」
『あそこ』とはもちろん、秘密基地のことだ。
確かにあそこは俺たちが昔よく遊んでいたところだ。
久々にあそこで遊ぶのもいいだろう。
そうと決まればすぐに準備するとするか。
「何をして遊びたいんだ?」
「そうだなー。・・・・昔みたいに、キャッチボールとかそういうことがしたいかも。」
ふむ。どこかにグローブがあっただろうか。そもそもサイズが合うのか分からんな。
まあ、ゴムボールとかにして軽く投げれば大丈夫か。
俺と結梨は物置から基地へ持っていくものをしばらく物色して、家を出たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます