第11.5話 話を聞いてくれる妹が2

じゃ、結梨ちゃん。次はどこに行きたい?」


UNIQLUを出て俺たちはより町の中心へと歩いていた。


「うーん。私と出かけて!とは言ったものの、私は会えたらそれで良かったし、ちょっとだけ新しくなったところを見せたかっただけだから、どこに行きたいとかはない・・・。」


あら、そうだったのね。それにしても、会えたらそれでいいってほんとにこの子は俺のことが好きだね。まぁそんなとこが俺もかわいいと思ってるけど。


でも困ったなぁ。俺も別に行きたいところないんだよな・・・


・・・いや待て。行きたいところあったわ。今になって思ったけど実家に行けばいいやん。明日暇だし。久々に実家に泊まればいいやん。


「お互い特に行きたいところがないなら、ちょっとその辺で買い物して実家に帰るか?俺、明日暇だしなんなら泊まろうかなって思ってるんだけど。」


そう結梨に提案してみた。


「ほんと?!今日泊まるの?!」


といきなり詰め寄ってきた。

流石に自分でもやりすぎと思ったのか、頬を赤らめすぐにもといた場所へ戻って行ったが、今だに口元をニマニマさせている。


俺としてもそこまで嬉しがるとは思ってなかったので、恥ずかしくなってしまった。


「結梨って、ほんとに俺のこと好きだよな。」


誤魔化すように放った言葉も


「んなっ!?・・・そんなこと・・・なくもない・・・けど。」


余計に恥ずかしい思いをさせられるのであった。


〇〇〇〇〇〇


あの後俺たちはスーパーへ来ていた。


母に今日泊まる旨を伝えると


『ほんとー?!全然いいよー!』


『だったら、帰るときでいいからこれ買ってきてね〜

お母さんはりきっちゃう!!』


『写真』


すぐに返信が来た。

・・・やっぱ母さんも俺が泊まることが嬉しいのか。だったらもっと早く帰ってくれば良かったな。と1人で反省をして、今度からはもっと帰る頻度を多くしよう。と決意した。


「ねぇー。お母さんなんてー??」


と先にカートとカゴを準備していた結梨と、スマンスマン。と言いながら買い物をはじめるのであった。



あらかた買い物を済ませて、今度は自分の泊まるための買い物も行っているとなんだかいい香りのするコーナーへ来ていた。


香水コーナーだ。


「そういえば結梨、香水とかつけないのか?」


おしゃれ好きな結梨ならこういうのもつけるかもと思い、そう尋ねたのだが


「うーーん。確かにつけたいなとは思ってるけど、ちょっと値段がねぇ。」


そして俺も値札を見てみるが、なるほどこれは学生には痛い出費だ。


それに結梨は俺の仕送りの件もあって、あまりお小遣いが貰えていないのかもしれない。


そう思うとどうしても何か買ってあげたくなるのが、兄としての気持ちだった。


未来の俺にバイト頑張れ!と思いながら


「なぁ。やっぱり何か買ってやるよ。せっかく久しぶりに会えたんだから何かプレゼントさせてくれ。

お金は大丈夫だ。近いうちにバイトするから。」


と提案したのだが


「・・・バイト、、、ね。」


何故か結梨は暗い顔を見せた。


「きっと兄さんは長く続けられないよ。」


おぉ、、、。俺全然信用ないじゃん。・・・確かに今までバイトしてなかったけどさ。


「そ、そんなことないぞ!絶対長く続けてやるからな!今ここで妹に誓います。」


ならば、信用をここで得るだけだ。


結梨の目を真っ直ぐに見てそう訴えると


「・・・ふふっ。ふふふ。・・・・ごめんね。冷たいこと言って。本当に兄さんは変わらないね。・・・わかった。だったら兄さんがバイトしないと生活に困っちゃうくらい高いやつ買ってもらお!!」


そう言って笑顔を見せてくれた。


「お、おう。任せろ。」


その言葉に一瞬怯んでしまったが、すぐに強がってみせた。


ふふっ。冗談だよー。と言いながら結梨は様々な香水を見て回っていた。


俺もそれについていきながら、目についた香水を手の甲にプッシュして匂いを嗅いでみる。


すると、鼻の中に仄かな甘い香りが広がって幸福感が一気に湧いてきた。今まで香水に大した興味を持っていなかったが、ここでも一つ感動させられてしまった。


「ねね。兄さん。これ良い匂いだと思わない?アイリスって花の香りだって。」


ふと結梨が近寄ってきて、手の甲をこちらの鼻に近づけてきた。

いきなり手を顔の近くに持ってくるのはやめようね。殴られるかと思っちゃうからね。


そうしてすんすんと匂いを嗅いでみるとこれまたいい匂いがした。こちらは柔らかく、穏やかな香りで先程とは違った感動があった。


「うん。とても良い匂いだと思う。」


「そっか。じゃあ私これがいいな。なんか、落ち着く感じ。・・・あ、でも、結構高いよ?」


「大丈夫大丈夫。頑張ればいいだけだから。」


そう言ってその値段を見てみると


9,900円


「・・・大丈夫大丈夫。気にすんな。」


10,000円を手渡して買ってくるように言った。


「えへへ。ありがとう!」


決して痛くないとは言い切れない値段ではあったが、結梨の嬉しそうな表情を見るだけでこれも安く感じるのだから、俺も結梨のことがほんとに好きなのだろう。


決して恋愛感情ではない、家族愛だが喜んで欲しいというのはどちらも一緒だ。そんな気持ちを持つことがより良い兄妹関係を築く上で大切なことなのかもしれない。

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