第11.0話 話を聞いてくれる妹が

「ねぇねぇ。最近文香さんとどうなの?」


買い物がしたいと近くの町へ歩く道すがら、結梨が話しかけてきた。


「そうだなー。夜になったら通話とかしてるけど基本は俺も大学だし、文香も仕事であんまり会えてはないな。」


「えー?そうだったんだ!・・・ちゃんと会ってあげないと寂しいんじゃない?」


「そうなんだよなぁ。俺もできれば会いたいけど仕事に邪魔かもとか思ってさ。」


「そうかもしれないけどさ━━━」


結梨は俺と文香の最近が気になっているのか、どんどんと質問をぶつけてくる。それが俺にとってはやり易くてありがたかった。


流石に面と向かって話すことが久々で、少しだけ気まずい部分もあったのだ。


それにしても、しばらく会わない間に結梨は結構成長しているんだな。


今まで俺と一緒に出かける時は、必ずと言っていいほど俺の袖を摘みながら歩いていたのに。

まぁ、会わなかった期間が長かったからというのもあるのだろうが。


「ところで、結梨は最近どうなんだ?気になる人でもできたか?」


「気になる人?・・・いないかなぁ。なんか、全然ビビっ!てくる人がいないんだよね。この人かっこいい!ってなることもないかな。」


「へぇー。どんなタイプが好きかとかもないのか?」


「えー?タイプかー・・・。そうだなぁ。苦しんでる人がいたら、身を挺して助けてあげる人。とか?」


ま、苦しむことがないのが一番なんだけどね。と少し恥ずかしそうに答えてくれた。まさか妹と恋愛について話す時が来るとは。感慨深いものである。


「あ!あそこ!兄さんがあっちにいってから新しくできたUNIQLUだよ!」


そうしていると、やがて町に到着したようだ。


「せっかくだから洋服とか買えば?次のデートとかの為に。」


それもそうだ。だけど、せっかくここまで来たし、妹にも何か買ってあげたくなっちゃうな。

しかし結梨は絶対に遠慮するので


「よし。それなら俺をコーディネートしてくれたら、結梨にも何か買ってあげるぞ。多少高くても大丈夫だ。」


こういえば結梨も遠慮することはないんじゃないだろうか。


「え、いや、いいよ。私も結構服持ってるし。・・・・てかそもそも兄さんバイトしてないんでしょ?そんなお金あるの?お母さんからの仕送りしか財力ないでしょ?自分のために使いなよ。」


おぅ、、、。確かにバイトしてないし、仕送りも振り込まれてるけど。

やっぱバイトしようかな。全然カッコつかなかったわ。


「ほんとに気にしないでね?ほら!気持ちだけでもありがたいっていうか・・・」


ちょっとだけシュンとした俺に慌ててフォローを入れてくれる結梨。

あぁ、なんていい子なんだ。俺の妹が優しいです。

そして俺はバイト絶対に始めようと心に決めた。



でも待てよ?なんで俺ってバイトしてないんだっけ


その疑問は


「さ!早く入ろ!」


と結梨に手を引かれたことですぐに霧散した。


ー・ーー・


「ねね!これとか似合いそうじゃない?!」


結梨が様々な服を俺に押し当て、あーだこーだ言っている。正直おしゃれに疎い俺はなんでもいいのではとか思ってるのだが、結梨はやたら熱心になっていた。


「な、なぁ。もう結構見ただろ?もう良くない?」


「だめ!兄さんがもっと文香さんに好かれるように、尚且ついかに安くできるかが勝負なんだから!」


この子はなにと闘っているのだろう。もう結梨はこうなったら止められない。素直に着せ替え人形に徹するとするか、、、。


俺は半ば諦めモードで終わりが来るのを待っていた。



それから30分後。ようやく納得がいったのか、商品を手渡され会計をした。


値段もそこまで高くなく、素直にかっこいいと言える物だったので、待った甲斐はあったといってもいいだろう。

会計を終え、結梨の元へ戻ると


「どう?高くなくて、それでいていい感じだったでしょ。」


どこか誇らしげに胸を張っていた。


「あぁ。ほんとに。すごいな結梨。」


「ふふん!ここには何回も来てるからね。任せてよ。」


成長したなとは思ったが、やっぱり褒められると調子に乗るところは昔から変わってないようだ。

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