第10.5 約束を守るあなたが②

今度は私と出かけてよ。』


という結梨と交わした約束を果たす時が来た。


結局あれから結梨から連絡がくることもなく、いつの間にか当日になっていた。


それにしても久々の兄妹でのお出かけだ。いったいいつぶりなんだろう。

確か俺が高ニのときまでは、結梨に誘われてよく出かけてたりしたものだ。


そのときのことを懐かしく思いながら俺は結梨に示された《いつもの》ところへ向かうのだった。



電車に揺られ、約40分。高校時代によく見た景色が目に入ってくる。

以前より日陰が多くなったと感じさせるほど木々が生い茂り、時の進みを実感させられた。


やがて、懐かしさと感動を感じていると


『まもなく〜、秋膳寺〜、秋膳寺〜。後方の車両のドアは開きません。お降りのお客様は、前方へご移動くださいませ。』


目的の駅が近づいてきた。俺も高校は電車通学で、よくここの駅で乗り降りしたものだ。


そして俺は、駅から出て歩いて10分ほどの場所にある、

《いつもの場所》へ歩みを進めた。


それにしても、静かでいいな。俺が今住んでいる場所も賑やかでいいが、ここは車の音も多くの人の声もあまり聞こえない。聞こえてくるのは風に葉を揺らす木々の音のみだ。


なんだか早く結梨に会いたくなってきた。



そして、俺は15分ほど早く、約束の場所へ到着した。


さて、《いつもの場所》というのはその昔、結梨と作った秘密基地みたいなものだ。とはいっても、元々設置されていた山小屋を自分たちでものを持ち込んだだけなのだが。

それでも、そこに置かれている赤い敷布団や、古くなった漫画たちが俺を迎えてくれた。


意外とキレイに保たれていることから、結梨は今でもここを掃除しにきてくれてるのかもしれない。思い出を大事にできるいい子だな。



「おーーーーい!!にいさーーーーん!!」


お、ちょうど結梨が来たようだ。


「はぁ、、はぁ、、。ふぅ。ごめん。待った??」


相当急いでいたのか、かなり息が乱れてしまっている。


「いや、全然待ってないし、そんなに急いで来なくても良かっただろ?」


「・・・だって、ヒサビサニメントムカッテアウンダモン。」


だってしか聞こえなかっため、なんて?といった視線を送ってみたが


「な、なんでもない!!こっち見ないで!!」


とそっぽをむかれてしまった。

おいおい、久しぶりの再会なのにそれは冷たく無いかな??


「・・・それよりさ、兄さんって女の子がおしゃれしてきても何も言わないの?」


いや、さっき見ないでって言ったばっかじゃん、、、。


「そりゃあ、ね?妹にまで言う必要ないかなって、、、。」


「ぶーー・・。もういいし・・・。時間もったいないから行こ。」


んー。妹の心が分からない。やっぱ久しぶりに顔を合わせるからちょっと緊張してるかもな。よし、ここは思い出話を交えて前みたいな感じに戻るぞ!


「・・・ここの秘密基地、掃除してくれてるのか?」


この問いに歩いて行こうとしていた結梨が足を止めた。

そして前を向いたまま、


「うん。一応、、ね。特に理由とかないけど。」


「そっか。俺との思い出の場所をキレイに保ってくれてありがとな。」


「もう!いいから行こ!時間限られてるんだから!早く!」


む。だめか。怒られてしまった。確かに時間ないし、ここは素直に従っておこう。


そして、先にいってしまった結梨を追いかけるのであった。

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