第3話 考えてくれるあなたが
「━━あなたが好きです!」
ケーキ屋の裏で、人生初の告白を受ける俺。
そんな俺の頭は疑問でいっぱいだった。
一目惚れ?俺はけしてイケメンではないのに?
一目惚れってなに?そもそも好きって何?
なんかの罰ゲームなのか?
そういえばどこかでこのような経験をしたような、、、。
こんな感じでしばらく悩んでいると
「あの、、。いきなりだったので、まだ困惑しているでしょうから返事はまた今度で大丈夫です。その代わり、、、また、ケーキを買いに来てくださいね!」
それじゃあ、また。と1人であわあわしてる俺に対し、ひらひらと手を振りながらケーキ屋へ戻る。
色々と情報量が多すぎて、俺はしばらくその場から動けなかった。
・ー・
ボーっとしながら家へと帰りつき、その勢いでベットへダイブした。
名前も知らない、見知らぬ女性から好きだと言われたことがどうしても頭から離れないのだ。もちろん、あんなに天使だと思えた女性から告白されて嬉しくないはずがない。しかし、冷静になってくると、初めましての人と付き合えるかと言われても、YESと言えないのが本音だった。ん?これどこかでも思った気がするな。
まぁ、今日買ってきたガトーショコラでも食べるか。
そう思い、フォークを準備し袋からガトーショコラを取り出すとポトリと紙が落ちた。
なんだ?これはと広げて見ると、そこには名前と連絡先らしき物が書かれていた。
名前を知った瞬間、不思議と話をしたくなり会いに行こうと決意しながらガトーショコラを口に入れた。それはチョコレートの濃厚な甘味と、その中にあるほろ苦さがマッチしていて非常に美味しかった。
「なぁ、お前って一目惚れとか信じる?」
大学終わりの帰り道、唐突にそう聞いてみた。
「え?まぁ、相手が可愛かったり、イケメンだったり、雰囲気がよかったりしたらあり得る話なんじゃないかー?」
イケメンだったら、ね。自分の容姿に自信がないからどうにも信じ切ることができない。でも待てよ?あんな子が一目惚れするってことは、もしかして、、、
「あのさ、俺って冬真から見てどう?」
「普通」
あねー。そうだよねー。普通だよねー。わかってたよそんなこと。
「何落ち込んでんだよ、、、。自分で言ってたじゃんかー。」
しょぼんとする俺に苦笑いしながら冬真が言った。
「でもまぁ、結局は見た目とかじゃなくて、この人は優しそうとか、この人とならうまくいきそうとか、そういうのがあるんじゃないか?好きになる理由なんてありふれてるし、その当人にしかわかんないだろうし。」
普通に見た目かもしれないけどねー。と照れくさそうに語る冬真だったが、この時だけは普段のマイペースさからかけ離れた、まるで誰かに恋をしてるかのような大人な雰囲気をしていた。
「じゃあ俺、こっちだから!またねーバイバイ。」
そんな雰囲気も一瞬に、いつものマイペースな冬真に戻り道を曲がって行こうとする。
そんな時に俺の脳裏に、こいつになら、告白されたことを相談してもいいんじゃないか?という考えが浮かんだ。
たとえ一目惚れされたことを話しても、恋人のいない冬真にとって自慢のように聞こえるかと思い、あえて相談をしなかったのだが、冬真なら彼女とのことをどうすればいいか良い意見をくれると思ったからだ。
「冬真!最後に相談したいことがあるんだけど!」
そう言うと冬真は振り返り、
「んー?どうしたー?」
と聞き返してくれる。
「えと、、実はさ、、俺、お前がくれたチケットでケーキ買いに行ったら、店員さんに告白された。だけど俺、こういうの初めてだからどうすればいいかわかんないんだ。別に自慢がしたいとかじゃない。ただ、冬真ならいい意見をくれるんじゃないかと思ったんだけど、、、。」
と、冬真の目をしっかりと見ながら自慢する意図はないと訴えた。
冬真は、まるで分かっていたかのように驚きを見せず、
「そうだなー、正直こればかりはいい意見はあげられそうにないなー。一応答えはあるけど、できれば自分で考えてほしいかなー。」
あとなんか普通に悔しいし!と結局教えることなく帰ってしまったが、言っていることはごもっともだった。
よし、明日彼女に会いに行こう!話を聞いてくれた冬真に感謝しつつ、俺はそう決意するのだった。
・ー・ー・
翌日、俺は彼女に会いにケーキ屋へ来ていた。
相も変わらずニコニコと笑顔を見せ、接客を行う姿は生き生きとしていて美しかった。
「こんにちは。ガトーショコラとチーズタルトを一つずつください。」
ケーキ屋へ訪れたのに何も買わないのもどうかと思ったので、この二つを頼んだのだが、
「かしこまりました!ガトーショコラとチーズタルトですね。合計480円です。」
と笑顔で対応をしてくれた。おつりなくお金を渡すと「少々お待ちくださーい。」と袋に詰めてくれる。
そして、俺に袋を渡す時さりげなく『30分後、以前と同じ場所で』と裏に書かれたレシートを渡してきた。
ま、暇だしここは従っておくとしよう。以前と同じ場所へ行き、時間を潰していると
「お待たせしましたー。」
と私服に着替えた彼女が出てきた。
「あの、、これ。わざわざ来てくれたので。よかったらどうぞ。」
とほんのりと甘い匂いのする物をくれた。普通に嬉しかったし、絶対ニヤニヤしてしまったと思う。帰ったら最初に食べよう。そう俺が決意したとき
「えっと・・・・それで・・・来てくれたってことは、返事をしに来てくれたってことですよね・・・?」
恐る恐る聞いてくる彼女に俺は一度心を落ち着かせ、ここにくるまでものすごく考えていたことを整理し、そのことなんですけど。と口を開いた。
「まだ、僕はあなたのことを全く知りません。あと、恋愛経験も全く無いんです。正直、好きだといわれたことも未だに信じられていないんです。・・・だから、あなたさえ良ければ、まず、、友達から始めませんか?」
たどたどしくも、言いたいことを伝えることができた。
うわーめっちゃドキドキしたわー。これ心臓に良く無いよ絶対。陽キャたちはこんなことを日常的にやってるんだったら尊敬するわ。
心の中がうるさい俺に、彼女は「やっぱりか・・・」と小さく呟いたかと思うと
「そういうことでしたら、全然大丈夫です。確かに、よく考えてみたら初めて会った人といきなり付き合えるかと聞かれると、私もきっと無理でしょうから。」
と微笑んで了承してくれた。
「ありがとうございます。よかったです。」
いやほんとに良かったよ!ここでテッテレーとか言われてたら俺は1ヶ月くらい人間不信になる。絶対。
そんな感じで俺がホッとしていると
「でも、友達から始めるなら敬語っておかしいですよね?
・・・いや、おかしいよね?」
違う?と彼女は少しイタズラっぽく言ってきた。確かに、それは間違ってないかもしれない。
「とゆーわけだから、宗則くんも私にタメ語でよろしくね。多分、年は同じだと思うから。あと、私のことは文香って呼び捨てにしてね。」
砕けた口調の彼女はかなりぐいぐいとくるタイプなようで、俺は「あ、えっと、」とかしか口に出せなかった。ひええ・・
そんな感じで、俺と文香の友達生活が始まるのだった。
「あ!今週の土曜日、私休みだから一緒に遊ぼ!」
早速、イベントが確定した。女性との初めてのお出かけ。俺はうまくやっていけるだろうか。
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