第8話 アニメオタクの恋の結末
僕は突進して来る口角に対して、再び身構え、こう叫ぶ。
「長いアニメの歴史において、相手を舐めて掛かる者、油断をしている者は大抵、敗れる。・・・・敗れるんだ!」
僕は口角のパンチを両腕で防ぎ、口角の隙だらけの脇腹に思いっきり蹴りを入れる。鈍い音と共に口角はまたゆっくりと崩れて行く。
「痛てぇよぉ。くそっ、オタクのクセに何で・・・」
口角はうつ伏せにうずくまり、涙を流しながら絞り出すような声で僕に聞いて来た。
「僕は一年くらい前からジムでキックボクシングを習っている」
そう、僕が筋トレと同じ時期に始めた自分に自信を付ける為に始めたスポーツだった。口角はそれを聞くと、うずくまった状態で声を上げて泣き出す。
しばらくすると由利本さんが何人か人を呼んで来てくれた。みんなこの状況に驚いているようで、僕に事の説明を求めてきた。
僕がみんなに動揺しながら事の成り行きを説明していると後から剛承さんが現れた。
「貴様は我がアニメオタク一門から破門となった口角ではないか!」
剛承さんはうずくまっている口角を見ると、そう叫んだ。僕は口角が昔、アニメオタクだったことを剛承さんから聞き、驚愕する。
「口角よ。何故、こんな愚行に出たのだ?」
うずくまって頭を上げない口角に対して、剛承さんは冷淡に質問する。口角は相変わらず泣きながら、何も言葉を発しない。
「水鳥に昔の自分の姿を重ねたか?」
剛承さんがそう尋ねると口角の体はビクッと反応し、再び口角は大声で泣き出す。
「・・・・剛承さん、また、アニメが・・・。アニメが観たいです・・・・」
口角は絞り出すような声で言葉を発する。
「観るが良い。アニメは貴様を拒んではおらぬぞ」
剛承さんは口角に優しく言葉をかけると、再び口角は号泣する。
こうして一連の事件は幕を閉じる。
口角も実はかつての僕と同じで、アニメオタクである為にモテない事で悩み、苦しんでいたらしい。そして、彼はアニメオタクであることを辞める決断をし、パリピとなったという訳だ。
だから、僕を見ると昔の自分を思い出し、嫌悪感が増し、僕に対して攻撃的な態度を取っていたようだ。
この出来事があってから口角は僕の事を馬鹿にするような行動は全く取らなくなった。僕の大学での生活は平穏となったのだが、僕にとってもう一つの重大な課題が残った。
由利本さんへの愛の告白である。
口角の事件のおかげで僕はこの日、告白を出来ずにいたのである。僕はまた剛承さんから先延ばしをするでないとお叱りを受け、由利本さんと会う予定を別の日に取った。
僕は愛の告白以外にも、もう一つの決断をする。自分がアニメオタクであることを由利本さんに話そうと決めていた。どんな結果になろうとも後悔はない。
前に約束していた映画を二人で観終わり、レストランで一緒に夕食を取る。映画の話題で盛り上がり、僕は事前に決めていた由利本さんとの会話を切り出す。
「由利本さんってアニメとか観るの?」
僕は恐る恐る彼女に聞いてみた。
「え、たまに観るよ。水鳥くんは?」
由利本さんは少し慌てた感じで聞き返してきた。
僕の答えは決まっていた。
「僕はアニメが大好きでよく観てるよ。凄く人生の教訓とかになっている。この事で由利本さんに暗いとか気持ち悪いとか言われたくないなと思って今まで黙ってたんだけど・・・-」
「・・・実を言うと、私もアニメ大好きなんだ。私もそれで水鳥くんに嫌われたくないから隠してたんだよ」
お互い目を見合わせて、少し沈黙した後、声を上げて笑う。その後、そうだったんだとお互い安心する。
僕達は好きなアニメの話やオススメのアニメの話題で意気投合し、至福の時を過ごす。
僕はその後、由利本さんを送って行く帰り道で由利本さんに告白する。
結果はというと・・・・・・
僕は剛承さんに結果の報告をしに、彼の家を訪れる。
「剛承さん。この度、由利本さんとめでたくお付き合いする事になりました。これも全て剛承さんのおかげです。本当にありがとうございました」
「水鳥よ。これはゴールではない。通過地点にしか過ぎない。アニメを観ろ!そこには幸せな人生を送る為の道しるべが示しておる!」
僕はまだまだこの人から教わることが多そうだと感じた。
アニメ好き限定!オキテ破りのモテ戦略 かたりべダンロー @kataribedanro
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