第4話 今こそ語ろう。これがモテ戦術だ!

  剛承さんは僕のことを弟子にしてくれた。もちろん友人の新野の紹介ということもあったが、何より剛承さん自身が僕のことを気に入ってくれたようで快く了解してくれたのだ。新野曰く、かなりの異例な事らしい。僕は剛承さんの教えを受ける為に彼のマンションを一人で訪れる。


「お邪魔します。凄く広くて綺麗なお部屋ですね」

 僕は剛承さんにリビングに通される。さすが医者というだけあって、高価そうなインテリアばかりだ。でもそこはやはりアニメオタクだ。戸棚にはアニメのDVDや漫画の本がぎっしり並んでいる。僕は慣れない場所であったが、それを見て少し安心する。


「水鳥よ、貴様のモテたいという気持ちに嘘偽りはないな?」

 剛承さんは凄みのある顔で僕をじっと見て来る。でも、僕の今の自分を変えたいという気持ちに迷いはない。

「はい、僕は大好きなアニメを捨てずに愛する彼女を作りたいです」


「フッ、良かろう。いい覚悟だ。教えてやろう。私の編み出したアニメオタクのアニメオタクによるアニメオタクの為のモテ戦略を・・・・」


「アニメオタクモテ戦略其の①、モテるアニメキャラのマネをせよ!!」


「でも、剛承さん。現実とアニメは違いますよ。現実はアニメみたいに上手くいかないですよ」

「否!断じて否!水鳥、だから貴様は甘いのだ。現実とアニメは関連している。貴様はやはりアニメから何も学んでおらぬようだな。愚か者め!何故、アニメから学び、実生活に活かさぬ。アニメは知識の山だぞ!」

 

 剛承さんの気迫に押され、僕の心と体が萎縮する。


「モテるアニメキャラは私なりの分析で言うと、幾つかのパターンがある。その一つに優しい、親切、誠実、真面目キャラはモテるというデータがある」

「お言葉ですが剛承さん。僕は決して自惚れではなく、そのキャラに近いと思うんですが、何故僕はモテていないのですか?」


「フッ、知れたこと。貴様がそういう男だと知っている女子が何処にいるのだ。誰もいまい。要はアピールをしていないから誰も気付かないのだ。例えば良い商品があったとしても、広告や宣伝をして皆に知ってもらわねば売れない。つまり、そういうことだ」

 僕はなるほどと何度もうなずく。


「他にモテるキャラとして言えば、頭が良くてクールなキャラがいる。貴様もこれは納得出来るな?」

 確かに僕もアニメで観てきた王道キャラだし、女性を惹きつけるキャラだ。再び何度もうなずく。


「だがこれは貴様向きではない。貴様は知性はあるがクールには振舞えないだろう。マネをするのにちょっと厳しいキャラもいる事を知るのだ」

 僕はポケットからメモ帳を取り出し、剛承さんの言葉を必死で書き写す。


「そして、強くて見た目がカッコいいキャラがモテる。分かるな?」

「はい、分かります。それも王道ですね」


「では、ここで本題を言おう。貴様は弱くてダサい。これが致命的なレベルだから貴様はモテない」

 僕はいきなり奈落の底に突き落とされた感覚に襲われる。


「この致命的な弱みがあるから貴様の強みが消され、弱みが目立ってしまうのだ。ならばやることは一つだ。分かるな?水鳥」

「弱みを克服するってことですか?」


「そういうことだ!ここで言う強いキャラとは肉体面だけの強さではない。精神面の強さ、感情のコントロールも含まれる。そして私がそれを養う為に見つけ出した方法は・・・・・」



「筋トレだ!!」


 えっ、と僕は自分の耳を疑った。これは予想していなかった展開である。

 

「今日からこのメニューを行ってもらう」

「こんなの無理ですよ。筋トレなんか僕は苦手でやってきたことがないんです。もっと違うモテるテクニック的なものを教えて下さい」



「では、貴様に問う。小手先の浅いテクニックを使って、偽物のモテ男になるか。根本から鍛え上げ、女性に感謝され、モテ続ける本物の男になるのか。どちらか選べ!」


「・・・・・・・本物のモテ男になりたいです。僕、筋トレやります」


「よし、それでこそ私が見込んだだけの男だ。ちなみに新野から聞いているかもしれないが、私は弟子から地獄の鬼コーチとも呼ばれている」


「・・・・・・・・・・・・よろしくお願い、します・・・・・」

 


 こうして、僕のアニメオタクモテ戦略による地獄の特訓が始まることになる・・・・・・

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