第2話 アニメオタク界のニュータイプ
僕は大学からの家路の途中の電車の中で考え込んでいた。
アニメオタクでは一生彼女が出来ないのではないかと・・・・。今までそんなことを考えたこともなかった。ただ大好きなアニメが観られればそれでいいと思っていた。
電車を降り駅の人々を見回す。夕方ということもあって多くの人が目的地に向かって歩いていた。やたらカップルばかり目に留まる。寂しい気持ちというか虚しい気持ちというか何とも言えない感情が脳裏を駆け巡る。いつもなら家に帰って大好きなアニメをゆっくり観ようと考えているのに今日はそんな気になれない。
僕は今、大事な決断をしようとしていた。
ーーーーーーーアニメを取るか?ーーーー彼女を取るか?ーーーーーーーー
アニメを捨てオタクを脱却し、口角のようなパリピな、チャラい軽い男になれば彼女ができるかもしれない。対称的に今まで自分の価値観や道徳観、大事な物を教えてくれたアニメを捨ててまで彼女を作る意味があるのかとも思う。
でも・・・・・・
アニメを捨てよう・・・・・・・・
孤独は嫌だ。誰かから愛されたい。その気持ちが強かった。涙がいつのまにか出ていた。出した答えに後悔はないそう思っていた。
「あれ?水鳥くんだよね?」
涙目になってうつむいている僕に若い男が話し掛けて来た。見上げてその男の方を向くと二人組の男女であった。男の隣の女性はかなりの美人である。再び視線を落として涙目を悟られないようにしていたがこの男に見覚えがある。
高校時代のアニメオタク仲間の新野しんのであった。
「もしかして新野くん?久しぶりだね。何してるの?」
僕は情けない姿を旧友に見られた恥ずかしさから動揺しながら事務的な質問をする。
「今、彼女と専門学校の帰りなんだけど水鳥くんは?」
「僕も大学からの帰りなんだ」
僕は条件反射的に質問に答えたが新野の”彼女”という単語が頭から離れない。再び新野の隣にいる女性を思わず見てしまう。
新野は隣にいる彼女に高校時代の僕との関係を説明している。それから新野の彼女は僕に丁寧に挨拶をして来る。
「もし水鳥くんが良かったらどっか飯でも行かない?久々に会って話もしたいし」
「うん、いいよ。僕も話がしたい」
明らかに高校時代の新野とは雰囲気が違う。何か垢抜けたような感じがする。僕はそれが気になった。何が彼を変えたのか?彼はアニメを捨てたのか?彼に対する興味が僕を動かしていた。
僕達三人は駅の近くのファミリーレストランに移動して食事を取ることにした。まだ早い時間なのか客は少なく混雑はしていない。ここでならゆっくり話が出来そうだと僕は少し安心した。
新野と彼女が隣同士で僕が新野の対面に座る。そして各自食事の注文を終え僕は話を切り出す。
「まさかあの新野くんに彼女が出来てたなんて正直驚いたよ」
「そうなんだよ。僕も自分で言うのも何なんだけど驚いている。高校時代の自分からは考えられないよ。あの時はアニメの女の子にしか興味なかったからね」
新野は自分が過去にオタクだったことを隠さずに話している。そのことに触れても大丈夫なんだと確認してから一番聞きたかった質問をする。
「今もアニメとか観てるの?」
僕は新野と新野の彼女の表情に注目する。
「今もめちゃくちゃ観てるよ。最近好きなのはアレかな?キャラがすごくいいんだ。彼女と一緒に観てるんだけど僕よりも彼女の方がハマってるよ」
「そうそう、面白いよね。私なんか感動して泣いちゃった」
新野と彼女が一緒に観ているアニメの話で盛り上がっている。僕は意外な反応に唖然としてしまう。
「アニメを観てても彼女は出来るの?」
「当たり前だろ?現に僕は彼女がいるし、その彼女からアニメを観てる事で嫌わててもいない」
僕は新野の返答に愕然とし、アニメを捨てようかと悩んでいたことを新野に打ち明ける。
「・・・そうだったんだ。それは辛かったね。だったら水鳥くんに紹介したい人がいる。僕の人生を変えてくれた恩人を。彼は僕達オタクを救ってくれる救世主さ。彼の名は剛承羅保人。」
「彼はアニメオタク界のニュータイプと呼ばれている」
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