幕章 平穏劇場
第1話 王女様の性……生活
前書き失礼します。
この幕章は第二章の構想がまだ練れていないので、前から書きたかった話を幾つか書いて投稿することにしたものです。
※注意、露骨な性描写があるので苦手な方はご遠慮ください。
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その日の夜、エルトリーアはバルドルの寝室に足を運んだ。
シャワーを浴び乾かしたばかりの金の髪を揺らし、可愛らしいネグリジェで肌を隠し、赤らんだ表情で入室すると、先に寝ているバルドルの隣りに潜り込む。
──結論から言うと、竜王との契約を失ったエルトリーアは、非常に甘えん坊な性格になっていた。
王族という立場、竜王との契約。エルトリーアを傲慢な性格たらしめていた要素が身近になくなり、真に一人というものを知り、人肌恋しくなっていた。
それを埋めるためにバルドルに一緒に寝ない? と提案し、同衾についての知識を全く持たない少年は、物語にあった「友達とのお泊まり会(男同士)」を想像し頷いた。
結果、エルトリーアはバルドルの様子を見て「襲われる心配がない」という安心感と信頼感から、現状のような関係が生まれた。
女として見られていないことに不満はあるが、バルドルに抱きついて、肌と肌を合わせて、温もりを得るのが心地よくて、エルトリーアは体の奥底に疼くような熱を覚えながらも、我慢して就寝した。
その夜の夢はとても口にしてはイケナイ内容だった。
気がつくと、エルトリーアは見知った部屋にいた。
「あれ?」
ベッドで体を起こした彼女は、寝室を見回す。正確には、特殊科寮の寝室ではなく王城の寝室だ。
いつも見ている部屋のはずなのに、エルトリーアは強烈な違和感を抱いた。
(寝ぼけてるのかしら?)
その正体を考えたいると、コンコン、ノックの音が聞こえてきた。
「起きているわよ」
声を張り上げる。
すると、エルトリーアの世話をする侍女の一人が「失礼します」と扉を開け、お辞儀をしてから部屋に足を踏み入れた。
エルトリーアはいつものようにベッドから起き上がり、スリッパを履くと、クローゼットと姿見が配置されている場所に行く。
その後ろに侍女が立つと、「今日はどのようなコーデになさいますか?」とほんの少しの水を生成する
「うーん、そうね。確か今日の用事は何もなかったわよね」
「はい」
エルトリーアはその日にある物事に合わせ服を決めている。大抵は朝に訓練を挟むので、動きやすく身軽な服装を求めるが、今日は違った。
朝から何もない完全オフ。毎日のように訓練を積み重ね、頑張ってきた自分へのご褒美の日だ。
気恥ずかしいが、思い切って言う。
「とびっきり可愛いのをお願いするわ」
「かしこまりました」
侍女は柔らかに笑むと、エルトリーアに似合っている服をクローゼットから取り出し、着替えさせて行く。
(なーんか、おかしいわね。服の着方が分かるわ)
着替えは侍女に任せているため、普通は分からないはずなのに、どうしてかエルトリーアは自分に着せられていく服を見ると、そんなことを思わずにはいられない。
できるのに任せる、ということにソワソワした感覚を覚えていると、バッチリ髪を整えられ、可愛い服を纏っている自分を鏡は映し出した。
「いい仕事ね、ありがとう」
「恐縮です」
侍女にとっては最上級の褒め言葉だった。
可憐に微笑む主の御姿に、ほうっと頬を緩ませ息を吐く。
そして、エルトリーアは可愛い格好に気分を上げながら、美味しい朝ご飯を食べ、綺麗な花々が咲き誇る庭園でお気に入りの恋愛小説を読む。
けど、その内容がちょっとおかしかった。
(どうして主人公のパートナーがこんな鬼畜男ばっかりなのよ!?)
これは本当にお気に入りの小説か? エルトリーアは憤慨しながらも、どうしてか目を離せない魅力がその小説にはあった。
その後、軽い昼食を頂くと王都に赴き、ウィンドウショッピングを楽しんでいく。
見たい物を見て、買いたい物を買い終えると、その時に購入した新作ケーキとお気に入りの紅茶を侍女に準備してもらい、庭園にて景色を眺めながら頂戴した。
そうして休日を満喫するエルトリーアは、満たされているのに、言葉にできない熱を体に感じていた。
……休日以外の殆どの時間を、兄のようになるために費やしてきた。
武術の訓練は欠かさず行い、美容のために気を使い、魔法を訓練するために知識を収集した。実技では武術と魔法を組み合わせた戦闘スタイルの確立を行った。魔法は相手により適性が変わるので、実戦で魔法と武術を両立させようとするのは難しい。更に使える魔法が増えれば、もっと良い戦闘方法が見つかる。そのため、魔道士は武術を学んでいる場合、戦闘スタイルの最適解を更新させ続けなければならない。
それは相当に頭を使う作業だ。
まあ、基本さえ学べば後は応用なので、慣れればすぐに新たな魔法を武術に組み込み、最適解を出した戦闘方法を確立できるが。
とはいえ、そんな訓練を毎日続けてきたら、疲れるのは当たり前だ。
(憧れに近づくために苦ではないのだけれどね)
兄が見せる王の姿に憧れた。
王は常に堂々としていて、文武両道、美麗衆目で、誰よりも凄い。王女なのに陳腐な言葉しか湧いてこないくらいに、エルトリーアにとっては単純かつ絶対的なものだ。
(……最近は竜の王ではなく竜の姫、なんて言われることが多いけど……)
エルトリーアは国王にはなれないからだ。
でも、エルトリーアがなりたいのは国王ではない。王というあり方そのものだ。誰よりも気高く、誰よりも強く、民を守護する者、絶対的な国の支柱。
エルトリーアなりたいのはそんなあり方だった。勿論、最近は平和で王族の力を振るう機会なんてずっと起きていない。
それは過去、戦争を繰り返した果に、魔王が復活し世界が終焉へと向かっていったからだ。
今では各国はそのことを理解しており、戦争をしている時に魔王が現れでもしたら、人類の生存が危ぶまれると確信している。ので、平和な世の中が続いている。
そして、魔王が復活する
「ふぅ、明日からまた訓練の日々ね……」
エルトリーアが視線を送る先で、太陽が夕日の中に沈んでいた。
これからのことを思うと、少し憂鬱な気持ちになるが、気を引き締めないといけない。エルトリーアはその思いを胸に宿し、部屋に戻った。
「あっ……」
部屋に戻った王女様は、激しい訓練のことを思い出したからだろうか。ずっと感じていた熱が高ぶっていた。
そのことに気づいた彼女は、侍女に「夕食の時間になるまで、疲れたから休むわ」だから何があっても絶対に出られない、と念を押し、完全に一人の空間を作った。
「っ……」
静かな部屋の中で、ベッドに座る小さな音が鳴った。服にシワを作るとバレる可能性があるため、可愛いスカートを捲くった。
ダメ、ダメだ……。
初めは耐えられた。
この醜き欲求を我慢できた。
でも、毎日訓練を続け抑圧されてきた、その獣慾は膨れ上がっている。訓練をすればするだけ、疲れれば疲れるほどに、反比例するように強まっていく。
(私は王族。こんなこと、王族にあるまじきことなのに……っ)
股の辺りが疼いた。
熱を、感じる。
グツグツという熱が脳を茹だらせ、思考を溶かしていく。
我慢した分だけ、脳髄に響くように、熱が注ぎ込まれていく。
「ぁっ……」
綺麗な白い足、健康的な太ももが覗き、薄赤色のショーツが見えた。侍女に頼んだ可愛らしい服は下着にまで現れていた。
エルトリーアの趣味の、清楚なのにちょっぴり
ジワ、とシミが浮かんだ。
まだイケナイことはしていないのに、抑えつけすぎた欲求、性欲が高まり過ぎている。不思議と誰かと肌を重ね合わせているような温もりを感じた。
誰かの温もりが心地よくて──気持ち良くて、擦れる度にイヤらしいことをしているみたいに、「んぅ……」甘い、吐息が零れ落ちる。
「や……」
思考を蕩けさせられた体は、指はその水玉模様に触れてしまった。
(ダメ、ダメなのに……さわ、ちゃった……)
溜め込んだ体は言うことを聞いてくれない。
指が柔らかい丘をなぞった。
擦る刺激が脳を更に溶かし、もう止まれないくらいふやかしてしまった。
「あっ、やっ、ダメ、なのに……」
禁欲を解放した聖女のように、王族としてしてはいけない禁忌を犯しているような感覚が、彼女の痺れを膨らませ、その指を早くしていく。
ダメ、ダメ……という声を発する度に、吐息は深くなり、声は甘くなり、語尾に♡がついてしまいそうなくらい、蕩けていた。
「あんっ♡」
刺激に慣れた体が、シミを広げていく。
水玉模様が大きくなっていく。
……なのに、エルトリーアの熱は全然満たされなかった。どうして? どうして? と疑問の思いが積み重なっていき、不意にエルトリーアは扉がノックされる音を聞いた。
「だ、ダメ!」
侍女だと思い込んだ王女様は扉にそう言いつける。にも関わらず、本来なら遠ざかるその人物は、言いつけを守ってくれなくて……。
「あぁっ……♡」
無造作に扉を開いた男は、バルドルだった。
エルトリーアは「見れちゃった♡」みたいな絶望と歓喜が入り混じったか細い声を上げ、バルドルを見つめた。
そのバルドルは封印の神器をつけていなかった。実はエルトリーア、シアを助ける時には目が覚めていて、バルドルの視界にこそ入らなかったが、彼の素顔をチラッと見ていたのだ。
素顔のバルドルはとても美しく、とても格好良く、とてもエッチな眼をしていた。そんなバルドルは、現実世界だと眠る時に絶対に手を出さない安心感があるのに……目の前のバルドルからは、今からとてもイケナイことをするような、色気が醸し出されていた。
「エル、何をしていたのかな?」
その微笑みはいつもの純粋な彼が浮かべるものではなかった。全てを知った上で、こちらをからかうような顔だった。
意地悪だ。私が何を望んでいるのか、どうして欲しいのか知ってる癖に……。
「い、言いたくない」
バルドルに見られたことが恥ずかしくて、手を止めたエルトリーアはスカートを元に戻し、ふいっと顔を背けた。
すると、いつの間にかバルドルが手の届く場所に立っていて、「あっ──」スカートを捲くってしまった。
前に顔を戻したら、冷ややかな眼差しでエルトリーアを射抜くバルドルが、微笑みながら冷たく言った。
「何をしていたのか、言ってみろ」
それは、罵倒するような命令だった。
王族に、王女に絶対にしてはいけない命令。
逆らわなければいけない、命令。
従うなんて、エルトリーアが目指す王から最もかけ離れた命令だ。
なのに、なのに……。
ダメだと分かっているのに、熱が最高潮に高まって、バルドルが見ている前でシミを広げてしまって、陶酔したような赤らんだ表情で、「……してました」と呟いた。
「ちゃんと、ハッキリ答えろ」
なじるように冷たく命ずる。
頭が、痺れた。
ダメだ。ダメだ。ダメだ。ダメだ……。
頭では分かっている。分かっていた。でも、心がかつてないほどに満たされていて、熱が高まり過ぎて、その熱に体を支配されて……。
「イケナイこと、してましたぁ……!」
そうしてエルトリーアは、バルドルにベッドに押し倒された。その後、侍女が夕食の準備ができたと伝えてきたが、エルトリーアが返事をすることはなかった。
「っ!?!?!?!?」
目が覚めたエルトリーアは、夢の内容を思い返し顔を真っ赤に染め上げた。
目の前にはバルドルがいたが、確認するようにネグリジェを捲くると、その下は事後のように凄いことになっていて。
未だに高ぶっている肉体は、それを求めるように、熱い眼差しをバルドルの指に向けてしまった。
「だ、ダメよ。現実で、そんなこと、
するなんて……」
エルトリーアは無意識にバルドルの指先を掴み……「エル」とバルドルの声が聞こえた。
「バ、バル!?」
イケナイ場面を見られたみたいに、体をビクッ! と震わせた。そして、バルドルが何かを告げる前に、恥ずかしさが天元突破した彼女は、「〜〜〜〜〜っ!?」逃げ出してしまった。
「あれ? どうしたんだろう? ……濡れ、てる? 汗でも搔いたのかな? シャワーに行ったし」
寝起きのバルドルだけは、状況をいまいち理解しきれずに、濡れたシーツを確認すると、まずは洗わないとな、と決意して、一日を始めるのだった。
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服に水玉模様ってよくありますよね。
柔らかい丘って布団のことなんだろーなー。
はい、というわけで後書き失礼します。
カクヨムさんがどこまで許してくるか分からないので、直接的に何をしているかは描写せず、最後の「○○してました」には4文字のワードが入る予定でしたが、明言すると何をしていたか確定させてしまうと思い、日和りました。
もしもアウトだと思った方は作者に伝えるか、通報してください。覚悟はできてます。
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