第5話 鳴海城(1552〜1553) 修正版
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2024.5.19修正
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末森城の大掃除を終えた信行は報告の為、那古野城に出向いた。
その場には平手政秀・内藤勝介・林秀貞が同席していた。
「勘十郎、お前の働きで家中の統制が滞りなく進んでいる」
「有難うございます」
「年明け早々に清洲を攻める予定で準備を始めている」
「援軍は必要でしょうか?」
「不要だ。大掃除の後始末を優先させろ」
「承知致しました」
「秀貞、勘十郎から聞いていると思うが那古野に来てもらうぞ」
「はっ」
秀貞は大掃除の際に処断された弟通具と繋がりは無かったとして罪に問われなかった。
しかし肩身が狭くなったので信行が気を利かせて那古野城に移る事になった。
「勝介、末森城の付家老を任せる」
「お任せ下さい」
「勝介、お手柔らかに頼むよ」
秀貞の代わりは勝介が務める事になった。
信行の傅役を任されて幼少の頃から接しているので気心が知れた関係である。
また戦働きの経験も豊富な事から若い家臣が多い信行にとって有り難い人物だった。
当主:織田信長
那古野城主:織田信長
末森城主:織田信行
筆頭家老:平手政秀
家老(那古野城付):林秀貞
家老(末森城付):内藤勝介
家臣(末森城):柴田勝家、佐久間盛重、佐久間盛次
「お願いしたい事があります」
「何だ?」
「鳴海城の安堵状を頂きたいのが一点。物見を兼ねて三河・遠江・駿河へ足を伸ばすのを認めて頂きたいのが一点」
「三河との国境がキナ臭い事になっていると言っていたな」
「山口教継が籠絡される前に手を打っておきたいと考えております」
「二点共に了承する」
「熱田の加藤光泰から駿府へ商いに行く話を聞きましたので手代として同行させてもらう事になっています」
「抜かりが無いな。出来るなら早めに帰って来いよ」
信行は鳴海城の安堵状と領内の道中手形を受け取ると末森城に戻った。
*****
信行は予定通り鳴海城を訪ねた。
数人の従者を同行させているだけで一行を出迎えた教継は驚いていた。
「教継、元気そうだね」
「ありがとうございます」
「今日はこれを渡す為に来たのだ」
「拝見させて頂きます」
信行は信長直筆の安堵状を教継に渡した。
「兄上は三河への備えとして教継の力を必要としている。宜しく頼むよ」
「…」
「今川からも安堵状を貰って迷いが生じたかな?」
「お戯れを」
「兄上を甘く見ない方が良い。お前が今川に接触している事は知っているぞ」
「それは…」
「隣に刺客を控えさせているようだね。悪いけど殺気が伝わっている」
隣に隠れていた嫡男教吉が唖然としながら部屋に入ってきた。
「いつからご存知でしたか?」
「この部屋に案内された時から違和感があったからね」
「そうでしたか」
「仮に教吉が動いたとしても上手く行かなかった筈だ」
「その理由は?」
「二人とも部屋に入ってくれ」
信行様が手を叩くと従者が部屋に入ってきた。
「ご無沙汰しております」
「勝家、それに盛次も!?」
「お元気そうで何よりです」
従者に扮していたのは柴田勝家と佐久間盛次である。
「今川の件は一切問わない。今まで通り織田に仕えてくれ」
「信長様は家中を掌握されたようですね」
「少なくない犠牲を出したが強固な体制を築きつつある」
「御館様はウツケではありません。ウツケのふりをして家中を見極めて我々を試していました」
「何と…」
「御館様に一度会われるべきです。変貌ぶりに驚くでしょう」
信長の資質に疑問を持ち今川からの接触に応じていた教継だったが、勝家と盛次から信長の凄さを聞いて離反する気が失せていった。
「今川とは即座に手を切ります。ご迷惑をお掛けしました」
「今まで通り尾張南部に睨みを効かせて今川と松平に備えてくれ」
教継は今川との関係を切る事を約束した。
熱田から来た光泰と合流した信行は末森城に戻る勝家と別れて三河に向かった。
【登場人物】
山口教継
→1490年生まれ、織田家臣(鳴海城代)
山口教吉
→1526年生まれ、織田家臣(鳴海城付)
佐久間盛次
→1523年生まれ、織田家臣(末森城付)
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